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晴と雨の××× 50

 どうにか話を進めようとしての苦肉の策のように思える。 「で、でも……」 「師匠の問題ですから弟子が助力します!さっ部屋へ案内がてらお話ししましょう!」  ね?ね?と言うと、阿川は俺の腕を引っ張っていく。 「わっ」 「こっちです」 「あっこたくんっ」  追い縋るように伸ばされた手を擦り抜けて、阿川に促されるままに扉へと行く。  後ろを振り返ると、きっとしょんぼりとした様子の虎徹がいるのがわかっているから振り返れなくて……  俺の代わりに振り返った阿川はぴっと背筋を伸ばして飛び上がった。 「あ、の、い、いいい、行きましょうかっ」  ざっと顔を青くして、阿川は慌てて部屋を飛び出して行く。  俺は……振り返った方がいいのを分かっていながら、そのまま一歩を踏み出した。  阿川の慌てぶりから、先に行ってしまっているのではと不安にもなったが、幸い部屋を出て右手に少し行ったところで立ち止まってくれている。  虎徹が泣いていたのがショックだったのか、動揺したような表情で固まっていた。 「案内、お願いします」  そう言うと、ギクシャクとした動きで歩き出す。  先導されて行く研究所の中はやっぱり迷路のようで、そこをするすると進んで行く阿川に感心の目を向けてしまう。 「道、迷わないで進めるってすごいですね」 「? ああ、迷いますよ、いきなり通れなくなってたりもしますので」  あはは と笑って返してくれるけれど、そんな造りにして不便はないのだろうか? 「わからないように傾斜がかかってたりもするので、気持ち悪くなったら教えてくださいね」 「え?」 「ボールとか置いたらわかるんですけど、勝手に転がっていく所もあるんですよ」 「それって欠陥建築とか言いません?」 「あはは」  乾いた笑いは、阿川本人もそう思っているんだと言ってそうだ。 「ここはシェルターもあるので、防犯のためにこう言った造りになっているそうです」 「そう……ですか……」  ここに来る前に、バース性についてネットで少しだけ調べてみた。  大体は、αβΩがいて、αは超人でΩは男でも子供を産むことができて発情期があって……その発情期にはフェロモンで誰彼構わず誘う。  Ωは病気だとか、伝染するだとか、産むための性だとか、Ωのせいで人生が狂ったとか、あとは……Ωに恋人や配偶者を取られたとか。  ネットで出てくるΩの情報は碌なのがなくて、大半はその淫らさを面白おかしく誇張して書いたものが多かった。  それと言うのも、過去に起こった事件が原因なのだと考察する意見もあったけれど……  

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