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晴と雨の××× 52
「……番……と言うか、一生を共にしようって思えるのがすごいと思って」
「え?」
「阿川さんは俺と年齢あんまり違わないじゃないですか?なのに、一生をその人といようって思えるって……」
わからないと言う感情ではなかったけれど、人生の伴侶を決めてしまうには早すぎるとは思う。
一時の感情?勢い?で決めて、もしもそのあと……
「理屈とかそう言うんじゃないけど、心が決めたって言ったらクサい台詞ですよね。瀬能先生に言わせると遺伝子の相性がよかったとかなんとかいろいろ言われるんでしょうけれど、そう言うのを抜きにしても……」
言葉を区切って阿川はすん と鼻を鳴らす。
何事かと見ていると、そわそわと辺りを見回しながら気もそぞろに「運命だと感じたんで」と呟く。
運命……
ここでもまた出てきた言葉に苛立ちを覚えるのは、俺のバース性がわからないせいか?
まるでその言葉を出せばすべてが許されて、すべてが解決するみたいにその言葉を出して……
「あの、ちょっと、行ってきても?すぐに戻ってくるんで」
そわそわとしたままの態度の阿川はそう言うと、俺の返事を待たずにすぐそこの角まで走り寄って身を屈めると、何かを喋り出した。
俺の位置からは見えないけれど、角の向こうに誰かいるようで、阿川は幸せそうな顔をしてその誰かと会話をしているようだ。
覗き込んだわけでもないのによく気づいたものだと感心していると、名残惜しそうにしながらこちらへと帰ってくる。
「すみません、待たせてしまって」
そう言いつつも視線は後ろをちらちらと見ていて、離れ難いと言う雰囲気を全身で表していた。
「用事があるなら道を教えてもらえたら一人ででも……」
行ける気がしない。
辛うじてやって来た方向はわかるけれど、それも今だからだ。
右を見ても左を見ても同じような場所の続くここでは、説明をされても辿り着ける気がしない。
「迷うと良くないですから」
俺の考えを見透かしたかのように言うと、阿川は角の方に向かって小さく手を振ってから歩き出す。
「少し落ち着いたら、今回のことをいろいろと聞くことになると思います。林原さんには嫌な記憶を思い出すことになるから不愉快かもしれませんけど」
「…………」
あえて思い出さないようにしていたことを口に出されて、拘束されていた腕を擦った。
そんなことで感触は消えなかったけれど、それでもこうやっていたらちょっとでもあの縄の感触が薄れるような気がした。
「あの三人はどうなったんですか?」
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