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晴と雨の××× 53

 尋ねてみたけれど、話を聞くと言われた段階で逃げられたんだろうことはわかっていた。  阿川の目から見ても俺の肩が気落ちしているのがわかったんだろう、案内する足を止めて申し訳なさそうな顔をする。 「   」  聞きたいことはいっぱいで、口を開こうとした俺に阿川は首を振ってみせた。 「すみません、疑問が多いことは良くわかってはいるんですけれど……」  それはつまり、ある程度のことがわかってはいるのだけれど、俺には話せないってことだ。  当事者なのに除け者にされた気がして気分が良くなかったけれど、俺を誘拐したあの男の堅気の人間ではない雰囲気を考えると一般人の俺に言った所でどうしようもないんだろう。 「部屋はここです」 「ここ って、この間の……」 「そことはまた別」  そう言われても配置されている家具も壁紙も床もすべて飾り気のないもので特徴なんて一つもない。  見分けろと言う方が無茶だ。  ここに住むとは言われても、迷う自信しかない。 「荷物は明日にでもこちらに運び込みますので。それからー……腹の具合はどうですか?」  仕事がひと段落したとばかりに、阿川はそう言って笑った。  広い食堂の隅は、人と距離を取ることができてそれなりに個人的な話をするのにうってつけだった。 「それで、その、オレじゃ相談に乗れませんかね?」  ああ、虎徹に言っていたことか……と、目の前のジュースを見詰めて思う。 「あいつさ、どう思う?」 「水谷さん?……は、えぇっと」  俺の質問に阿川はあたふたと辺りを見回し、潜めた声を聞けるような距離に人がいないのをわざわざ確認してから「バケモノです」と囁く。 「バケ……?」 「あっいやっ……凄い人です……」     慌てて言い返したけれど、阿川が虎徹のことをどう思っているのかは明白だ。 「あの、それと林原さんが避けてることになんの繋がりが……?」  困惑した問いかけを返されるけれど、正直俺だって虎徹を避ける理由についてどう切り出していいのかわからない。  とてもセンシティブな話だと思うし、能天気な虎徹のこととは言えソレを安易に話すのはいいことではないと思う。  だからと言って……このまま置いておくと虎徹は諦めないだろう。  きっと、納得がいくまで真っ直ぐに向かってくるはずだ。 「水谷さんのこと嫌いなんですか?」 「…………ぃ、ゃ」  呻くように出た答えがすべてだ。  俺は……家に虎徹が裸エプロンでいようとも、空からいきなり落ちてこようとも気にならない程度には……うん、まぁ……悪く思っているわけじゃない。  

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