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晴と雨の××× 54

「じゃ、どうして?」  阿川の問いかけは、好きなら何も問題がないじゃないか と言っているのが透けて見えた。  でも、それだけじゃどうにもならない問題もあるんだって、俺は知ってしまったから…… 「お家の問題ですか?」 「家?いや、うちの親はそんなことは気にしないし……」  男を連れてこようが、誰を連れてこようが気にしないし、口を出すこともないだろう。  自分の考えで選んだのならそれでいい と言う考えの両親だったから、このことに関して両親がネックになることはない。 「えっと、じゃあ、嫌いでもないのにどうして水谷さんを避けるんですか?」 「……」 「好みじゃないとか?」  そんなことはない。  見た目だけで言うなら、ちょっと幼く見えるのがあれだけど文句のつけようもないくらい可愛いし、突飛な行動も実はまんざらでもない。  とんでもないことをする時もあるけれど、俺が嫌がったら素直に譲歩してくれるし、不愉快なところはまったくない。  ちょっと猪突猛進するとこもあるけど……  虎徹に振り回される日々はなんだかんだ騒がしくて、楽しくて。 「じゃあ、どうしてなんです?」  阿川は心底不思議そうで…… 「阿川さんと虎徹は、仲がいいんですか?」 「仲……と言うか、オレは水谷さんに師事してます」 「勉強?じゃないですよね」 「はい」  阿川が拳を作って見せてくれたので、そっち関係なんだってすぐにわかった。 「あ!ケンカが強いのがダメですか?」 「いや、それも別に……」  虎徹の武勇伝は知っている……と言うか、数年前の話だと言うのに未だに伝説的に語り継がれているのを友人から聞いたことがあった。  眉唾と思っていたその事柄も、実際に虎徹の身体能力を見れば納得できないでもない事柄で…… 「ホントに?大丈夫ですか?あの人バケモノですよ?なんかあったら絶対に勝てないですよ⁉」 「いや……別になんかあるわけじゃないし」  食い気味に身を乗り出す阿川は、虎徹に何かされたんだろうか? 「あっ!オレと水谷さんに一切そう言う雰囲気はないですっ!」 「う、うん、それも  知ってる」  見ていればわかる。  と、言うか、阿川は虎徹に対して怯えているようだし…… 「……じゃあ、何が原因なんです?や、そりゃ、気持ちなんて全部が全部言葉に出来るものでもないですけど……悪く思ってないって言ってるのに、どうして?」  何度目かのやりとりにぐっと唇を噛んだ。  これを話してしまうのは俺自身の矜持に関わることだし、話された方もどうしていいのかわからない顔をするはずだ。  

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