451 / 714

晴と雨の××× 58

 普段の突飛な態度と話しぶりからは想像もできないほどまともな言葉に思わずぐっと口を引き結ぶ。 「でも、そう言うのだって限界があるから、別れるって選択があるんだろ?」 「うーん……そう言うこともあるかもしれないけど、最大限そうならないように努力するかどうかは出来ることじゃないかなぁ?最終的に、そう言う選択を取ったとしても、二人で前向きにやっていけるなら、完全悪ってわけじゃないと思うし」 「前向きにやった結果、周りが迷惑を被るんだよ」  思わず吐き捨てるように言った俺に、やっぱり虎徹は怯んだようだった。 「どんなに好き合ってても、譲れないものが衝突してその結果、別れたくないから傍に居ないなんて馬鹿らしいだろっ」  怒鳴り上げると、天井の高い食堂のせいか自分の声がわんわんと響いて……  自分が何を叫んだのか理解したのはその残響が消えてからだった。 「  っ」 「……こたくんの、ご両親のこと かな?」  狼狽える俺に申し訳なさそうに尋ね、虎徹は言葉を探しあぐねているかのように困った笑いを浮かべる。 「……。そう。好き合って結婚したのに、お互いいろいろ譲れなくて……でも好きだからって離婚しないまま、嫌いになりたくないからって離れて暮らしてる。なんだそれって感じだろ」 「……でも、僕たちもそうなるとは限らないよ?」  それはそうだ、両親の場合が極端だってさすがにわかる。  でも、それが俺達に当てはまったら?  そんなことない!二人なら乗り越えられるさ!と気楽に言うには、虎徹の×××……が凶悪過ぎる。  見ただけで精神的にアレだと言うのに、キスのその先を考えてしまうともうダメだ。  妥協や譲歩できる気がしない。 「ち〇こ切れ」 「なんで⁉」  ぽつんと漏れた言葉を虎徹は聞き逃さなかったらしい。 「全部解決しそうだから」 「ええええええ⁉脈絡がわかんないよ!あっでもっヤりすぎてもげるのなら……」 「切れ」  「えええええ」と再び上げられた虎徹の声を掻い潜るように、響きのいい男の声が「何を叫んでるんだ」と呆れを含ませた調子で投げかけられる。 「あ!わんこくん!聞いてよ!こたくんが僕のおちんちん切れって!」 「…………世界が平和になるな」 「なんでー⁉」  いつの間に傍まで来ていたのか、その男を見て反射的に身をすくませてしまったのは、スズメと同じ人種だと一瞬で理解させるような雰囲気のせいだ。  あくまでただのスーツ姿のはずなのに、こちらを遥か高みから見下ろす眼光のせいなのか、それとも服の上からでも隆々としているのがわかる体つきのせいなのか……

ともだちにシェアしよう!