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晴と雨の××× 59

 そこに居るだけで人を威圧する、そんな人間だと思った。 「ワンコくんひどい!」 「なんの話かは分からんが、世界平和のためにはなくてもかまわんだろう」 「なんでー⁉」  虎徹が必死に言い募るも男は真面目に受け止める気はないようだ。 「ヒドイやっなんでそんなに機嫌悪いの⁉」 「ヒドイも何も。出先から直接会いに来たと言うのに顔を見せに来なかったのはお前だろう?」  不機嫌そうに言うと、傍らのキャリーバッグをちらりと見下ろした。  男が持っているからか気づかなかったが、人ひとり入りそうなサイズを見ると長期間の旅行か出張だったのだろう。 「あ、そう言えば呼ばれてたんだった」  ぺろりと舌を出して可愛く言ってみて……果たしてこの男に通じるんだろうか? 「それで用事は終わったのか?」 「…………まだ」  つんと唇を尖らしながら、男と話していた虎徹が振り返る。  でも、正直こうやって話が逸れてしまった以上また話し出せる雰囲気じゃないし、それに初対面の人間の前でする話じゃない。 「僕のおちんちん問題が残ってる」  せっかくいい感じで終わりそうだった話を蒸し返されて、居心地の悪さに視線を逸らした。   「解決はしないだろう?行くぞ」 「えええっやだ!」  堅気に見えないこの男相手に怯むことがない虎徹の胆力に驚きつつも、男が怒り出さないかとそろりと様子を窺う。  虎徹は気楽に接しているようだったが、そんな気楽な相手には見えないし何より気に食わないことがあればあっさりと腕力で解決できそうな体躯だ。  機嫌を損ねて虎徹に何かあったら と思うと、落ち着かない。  俺が間に入ってなんとかなるだろうか?   「僕はこの問題を解決するために君と手を組んでるんだから、解決しない限り動かないからねっ」  つーんとすねてみせるけれど…… 「どうせお前のナニがでかすぎて入る入らんの話だろう?」 「おぉ!なるほど!さすが同じ悩みを持つだけあるね!」 「俺は困ってはないぞ」  呆れたように言い、重そうなキャリーバックを掴んで歩き出す。 「下らん話に付き合う気はない」 「えええっひどい!もっと親身になってよ!」  踵を返そうとするところに追いすがる虎徹にうるさいとでも言いたげな視線を向けて……  それから鋭い眼光がちらりとこちらを見た。 「別にセックスだけがコミュニケーションじゃあないだろう」 「でも、えっちもコミュニケーションだよ!」 「入れるだけがセックスじゃあないし、それだけが愛情表現じゃあなかろう。それはお前らで解決するべきことだ」  真っ当な言葉に虎徹がぐっと唇を引き結ぶ。

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