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晴と雨の××× 62
「こんなさぁ……碌に自分の尻も拭けないようなガキにどうしてそこまで執着するわけ?」
「うん?」
尋ねると、虎徹は少しだけ視線を海の方に向ける。
そうすると鮮やかな青に反射した光がきらきらと瞳の中で光って見えた。
「うーん……守ってくれるからかなぁ」
えへへ と笑って返してくるけれど、正直に言ってしまえば俺の腕っぷしと虎徹の腕っぷしでは雲泥の差どころではないくらい差がある。
ケンカらしいケンカもしないままひょろひょろと大きくなった俺は、拳の握り方ひとつ良くわからない。
それに、守る なんてことは言えない身の上だ。
実際に助けに来てくれたのは虎徹で、俺は誘拐されて犯人達に黙って従うしかできなかった。
そんな人間が、何を守るって言うんだか。
「最初に会った時もそうだしー」
虎徹が思い出す顔をすると、ちょっと頬が赤くなる。
「僕が上から飛び降りる度に受け止めようとしてくれるでしょ?」
「あれは……そう言うもんだろ?落ちて……危ないし」
それだけで、それ以外に何かあるってわけじゃない。
最初に出会った時だって、絡まれてたから助けただけであって……別に……
「わんこくんと話してた時も何かあったら間に入ろうと思ってくれてたでしょ?」
「いやだって、お前があんまりにも能天気だから……」
「何かある度に、こたくんは僕を守ろうとしてくれるでしょ?」
照れて言いながら、虎徹は俺の手についた砂を指先でなぞるように払う。
「僕はお兄ちゃんだし、ずっとずっと守らなきゃな立場だったから、それが嬉しくて」
にこにこと笑う顔はいつも通りなのに、珍しくまともなことを言っているせいかなのか、それとも海の光の加減のせいなのかふわふわといつも以上に可愛らしく見える。
「こたくんだけだよ、僕を守ろうってしてくれたのは。だから僕はこたくんのことが大好きだし、大事にしたいし、害するものからすべて守ってあげる!」
沁みるような体温を持つ手をしっかりと握り締めると、えへへと笑い返されて……
問題は何一つ解決してないし解決する気配もないけれど、俺を真っ直ぐに見てにこにことしてくれる虎徹を見ていたらなんだかどうでも良くなってくる。
「だから、こたくんがお嫁さんね」
うふふ と可愛らしく微笑まれて、つい頷いてしまいそうになったのを寸でで堪える。
「それはないな」
「えええええ⁉なんで⁉そう言う流れだったのに!」
「いや、全然だよ」
大袈裟なまでに大きな声で「なんで⁉」と叫ぶ虎徹を眺める。
×××問題は解決はしてないけど、当分はこれでいいと思った。
END.
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