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落ち穂拾い的な 降ってくる理由と白衣
虎太郎が腰を擦りながら診察に入ってくるので、瀬能は首を傾げる。
「やりすぎかい?」
「なっ……にも、やってないです!虎徹がまた上から降ってくるからっ」
「ああ、受け止めようとしたの?ダメだって言っただろう?それすごく危ないことだから」
「わかってはいるんですけど、……やっぱ下に落ちたら危ないなぁとか……体が勝手に動くんだからしょうがないです」
瀬能は溜息を吐きながら、座るのも辛そうな虎太郎にベッドを勧めて湿布を取り上げた。
「飛び降りたくらいで彼がどうにかなるとは思えないけどねぇ」
「いや、そうなんですけど……」
虎徹の身体能力を考えれば、虎太郎は自分の行動が無意味なのだと理解できた。
でも、それと心配するのは別の話で……
「それに、彼なりに対策は取ってるみたいだし」
「対策?」
そう言われても、見上げる度に全力で飛び降りているように見えるだけに対策も何も……と虎太郎は呻く。
「布一枚広げただけでずいぶんと衝撃って和らぐものでね」
「布?」
と、言い返して、ひらひらと広がるスカートと、学校ではそれに加えて白衣を着ている。
常に着ているから、ただ気に入っているだけなんだろうと思っていた虎太郎は、虎徹の意外な部分を見た気がしてぽかんとした。
「あ!」
「あれ、パラシュート代わりだと思うよ。って、それより、受け止めるより、飛び降りないように言った方が早いんじゃないかな?」
「あー……どうでしょうか」
「なんで彼はことあるごとに建物に上るの?高いところ好きなの?」
瀬能の言葉に、何とかと何とかは高いところが……の言葉を思い出しかけて、虎太郎は慌てて首を振る。
「あいつが上に行くのは、道に迷うからだそうです」
「は?」
「あいつ、すげぇ方向音痴で……んで、昔、道に迷ったら高いところにって言われて、それを実践してるんだそうで」
「……」
「んで、高いところから目的地見つけて飛び込めば迷わないって言う……」
自分で説明しておいて、その荒唐無稽さに虎太郎の言葉がどんどん小さくなって行く。
「そう言う……理由らしい……です」
ぴぃっとテープで湿布を固定して、瀬能は困ったように眉間に皺を寄せて溜息を吐く。
「まぁ、なんにせよ君より彼の方が断然体も強いんだから、もう受け止めるのはやめておいた方がいいと思うよ。条件反射で……なんて笑い話にできなくなるような怪我をするからね」
小さな子供の悪戯を叱るように諭されて、虎太郎は虎徹が悪いはずなのになぜ自分がこんなことを言われているのかとむっと唇を曲げた。
END.
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