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落ち穂拾い的な 大神と水谷の力比べ

 ミシミシと音を立てて崩れたテーブルを前に、しずるは青い顔のまま左右にいる大神と水谷をおろおろと見遣る。 「…………え、と、ひき、引きわけじゃ……」  駄目ですか?の言葉は音になる前に口の中で消えた。 「男同士の勝負だよ⁉ 引き分けとかありえないよ!」 「いい機会だ。ここでしっかり決着をつけるぞ」  わっと上がった水谷に応えるように、大神も言い返す。 「え……でも、机も壊れちゃったし……」  だからやめましょう の言葉はやはり出てこない。  しずるはこんな事態を起こしてしまった自分の軽率さにぐっと目を閉じて天を仰ぎ見た。  ことの発端はしずるの一言だった。 「結局、二人はどっちが強いんですか?」  その一言にさっと大神と水谷の視線が絡み……  無言のやり取りのあと、同時に「俺だ」「僕だ」の言葉が上がった。  大人げないと思ったものの、だからと言ってこの二人の言葉に逆らえるはずもなく……  しずるは大人しく「はい、そうですね」と返事をしてその場を去ろうとした。 「いやいやいやいや、ちょっと待ってよ!ここは弟子として、僕の方が強いって言うべきでしょ?」 「何を言っている。生活の面倒に加えて俺は上司だぞ?俺のほうだろう?」  なんて大人げない理由でしずるに迫る。 「あ……その、ほら、力じゃ大神さんが強いし、スピードは水谷さんが早いし……みたいなじゃダメです?」 「「あ゛?」」  ひぃっと悲鳴を飲み込み、しずるはぶるぶると体を震わせる。 「僕がいつスピード重視だって言ったのかな⁉」 「へ⁉ いや、だって……だって……だって……」  誰がどう見てもそうだろう⁉と叫び出したいのをぐっと堪え、しずるはヘラヘラと笑う。 「お前は片手で持ちあがるが、水谷は持ち上がらんぞ」 「へ?」  なんのことだと首を傾げてる最中に思い出す。    筋肉は、重いんだ。    自分自身よりもはるかに小さい水谷を見下ろして、しずるの喉がごくりと動く。 「信じてないなー!その目!えっちぃ!」 「や……なんでそうなるんです」 「水谷!」  大神がそう短く水谷を呼ぶと、応接セットの大理石のテーブルの腕に肘を置いた。  その体勢は腕相撲だ。 「まぁわかりきった勝負だがな、目に見える形で下の者には示してやらんと」 「そうだよね!誰がテッペンかわからなかったら混乱するもんね!頭は二人もいらないんだよ」  大神だけでなく、いつも甲高いイメージの水谷の声もじっとりと低くなって行く。 「ちょ そ、そんなこと、しな  」  とめようとするしずるを無視して二人の腕相撲が行われて……  そして見事に崩れ落ちる大理石のテーブルがあると言うわけだ。 「…………コレ、瀬能先生に叱られるの、オレってパターンですかね……」  思わず出た言葉だけれど、間違いはないだろう。  しずるはどうしてくれようと肩を落としていると言うのに、それを放っておいて二人の男はまるで小さな子供のように、どっちが強いのかを言い争っていた。     END.

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