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この恋が不幸だと、貴方は思いますか?2

 ベンチに座り込んでぼんやりと視線を投げる。  いつもどこか感じていた空虚な感覚は、きっと魂の半分とも言われる運命の番と出会えなかったせいだ。  Ωには、この世に宿命づけられた運命の相手がいると聞くけれど、僕は出会ったことがない。  こんなことを言うと友人達は何を夢見ているのだと笑うのだけれど、僕の抱えているこの物足りなさと言うか、空虚さはいつか出会う運命の相手であるαでないと埋まらない確信があった。  同じΩの友人に言っても、微妙な反応をされるから……きっとこれは僕だけの感覚なのだろうけど、僕は絶対に運命に出会う確信があった。  半身を求め続ける日々は虚しくて……  僕のこの感覚がただの思い込みだと思い始めた頃、彼が僕を見つけてくれた。  満開の桜の木の下でかけられた声は掠れてうまく出ないようだったけれど、どうしてだか僕にははっきりと聞こえて……  この恋は不幸だと、思いますか?  深く皺の刻まれた顔に彼の人生を垣間見た気がする。  彼には、僕がこれから先過ごして行くような人生を経験した深みがあった。  杖をつかなければならない体で、彼は見つけた僕に向けて懸命に歩いてくれた。  それが、ただただ嬉しくて……  僕を見つけて、傍に来てくれたことが、幸せで……  彼が傍に座るこの時間が、愛おしくて愛おしくてしかたがなかった。  手を繋いだからと、僕らの間にはそれ以上のものはない。  友人がはしゃぎながら語る燃え上がるような感情のやり取りも、身を焦がすような情欲に互いを貪ることも……  他の人から見れば、奇妙な二人組に見えたに違いない。  祖父と孫でもおかしくない二人が、ただただベンチに座って他愛無い言葉をポツポツと交わしながらぼんやりと景色を見ているのだから。  彼の手は細く筋張って、節が目立つ。  それから皮が深く皺を刻んで、ひやりとしている。  僕を抱きしめることができるほど力は強くなくて……  けれど、手を繋いでいるうちに僕の体温を移して少し温かくなることに、胸がきゅっと締め付けられた。  運命に出会ったら……?  昔から繰り返し考えていたことだし、何が起こるのだろうと夢を見ていたけれど、現実はとても穏やかでふわふわと暖かくて、愛おしい日々だ。    傍に彼が座っているだけで自然と口の端が上がる。  彼がポツポツ話す思い出話が可愛くて仕方ない。  穏やかに皺の寄る彼の目元が、僕を見てふわりと柔らかく歪んでは、その瞳に僕を写し続ける。  祖父と孫ほど歳の離れた僕たちだけれど、これは確かに恋だった。  

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