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雪虫3 3

「なん っなんで、お゛れ……っ」  口の中の金臭い気配に、唾を飲み込まずに吐き出すと更に赤い水溜まりが広がって…… 「し しずる!」 「立て」  止まらない鼻血に混乱しているオレに大神が声をかけてくる。 「あ、え、……や、な、なんで殴ら  ────っ!」  ぶち と骨を伝って音が響く。  いつ見てもすくみたくなる大きな手が髪を鷲掴んで一気に引き上げるから、反射的に「ぎゃっ」て情けない声が漏れた。 「やめっ  っ!やめぇやっ!」  甲高い悲鳴のようなみなわの声が響いたけれど、大神はそんなことで手を緩めるような男じゃない。  振り回すように乱暴に引っ張られて、なんとか爪先で体重を支えていたけれどそれもあっと言う間に届かなくなった。 「 ぃっ  あ゛っ」 「! っや……ぉ、大神さ……ゃ、やめてぇや……っ、っ  」  しゃくりを飲み込むようなぐっと言う音と、拘束された体を動かそうとしているガタガタと言う音が聞こえて…… 「  っぃ、う、からっ言うから!しずるをっ  しずるを……」  嗚咽に悲鳴を混ぜながらみなわが叫ぶと、それを冷ややかに見下ろした大神が何の前触れもなく手を離す。  殴られた時と同様に、突然床に投げ出されて強かに体を打つ羽目になった。    そんなオレの腹に、やけに艶のある傷一つない革靴が躊躇なく振り下ろされる。 「あ゛っ!」  濁った声と共に赤い液体を吐き出すと、みなわの足に飛んで小さなシミを作った。 「や……やっ!やめぇ言うてるっ!言うって言うたやんかっ!しずるにっ手ぇ出さんといて!」    縄のギチギチと言う音を聞きながら「なんでオレを?」と呻くと、冷たい視線を向けられる。  その視線がさっと動くのに倣い、泣き喚くみなわを床から見上げた。  そこには、顔の形が変わるまで殴られても微動だにしなかった姿が嘘のように、顔色を変えて泣き叫ぶみなわがいて…… 「うち がっ……あんなことをしたのは……っあ、和歌(あえか)に、頼まれた から、で」  呻くように出された言葉に、大神がぴくりと反応した。 「お前が知っていることをすべて吐け」 「  っ、うちが……知ってるのは、……あの家の二階にいる アルビノの子を攫う こと、くらい で」  短い言葉が終わった途端、大神の足がまたオレに向けて振り下ろされる。  今度は蹴りつけると言うよりも踏み躙ると言った方が正しくて、硬い踵がろっ骨を押したために反射的に悲鳴が出た。   「ぅあ  ────っ!」 「やめっ  っほんまに……それだけで……あとは、そこで見聞きしたことを……っ伝える、くらい。ほ、ほんまなんやっ!ほんまやって!信じてぇやっ」  

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