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雪虫3 4

「あ゛────っ!」  ミシミシと軋む骨の音から逃れようと大神の足を引っ掻くも、そんなことでどうにかならないのは初対面の時に経験済みだ。 「しずるっ!も、もう……ほんま   許したってぇやっ!もうこれで全部やっ!他にはなんもないっ!」 「この後、お前の脱出手筈を教えろ」  ぼろぼろと泣きながらオレを離すように言っていたみなわがひくりと体を跳ねさせる。 「な に  ?」 「誰がお前を助けに来る手筈だ」  うまく開かない目を一度ぎゅっと閉じてから、みなわは緩く首を振った。  そのジェスチャーが何を意味するのか掴み損ねて、オレは潰れてうまく動かない肺で短い呼吸を繰り返す。 「   誰もこぉへん言うて、信じてくれるんか ?」 「……は?  なんで  ────っ!」  ガツン と腕を蹴り飛ばされて、また悲鳴が漏れた。 「ほんまやっ!ほんまなんやっ!嘘なんか言ってないっ!うちは捨て駒やからっ誰も助けになんかこぉへん!」  激しく軋む椅子の音の合間に、「しずる」「しずる」と繰り返し名前を呼ぶ声が聞こえる。  ────正直、分からなかった。  やり取りがあったとは言え、みなわとは実験を行うようになってからの付き合いで、それにどうしてかオレはこの人のことを好意的に見ることができなくて、随分とつっけんどんな態度をとっていたと思う。  なのに…… 「しずるっ!」  嗄れた喉で懸命にオレの名前を呼び続ける姿は…… 「どうして迎えに来ない」 「……っ、やって、和歌とは……仲間、とか……そう言うんでもないし、もともと 足止めを、するためやったから  」  みなわの言葉を聞いて、大神がオレの上から足を退ける。 「金か」 「金  」  曖昧な繰り返しに、大神の眉が上がった。 「うちも、もう とっくに引退してやないかん年やし お金が欲し   」  カツンと音がして勢いよく足が振り上げられ……  あれほど水谷に特訓してもらっていたと言うのに、大神の威圧感に身が竦んで動かない。   「ちゃうっ!」   叫び声に大神の動きが一瞬止まり、そして爪先がゆっくりとオレの喉の上に下ろされる。 「な 大神さ  本気じゃ、ない「やめっ」ですよね?」  初めて出会った時に、この足で喉を踏まれた記憶は鮮明で……  ざっと血の気が引いた。 「やめっや、死  っ殺さない「やめてっ!」でっ!」 「あいつが正直に「や 」言えば殺しはしない」 「ちょ 冗談「言う!言うから!」……お、オレ、アルファだし使いみちだって……」 「お前程度のアル「あかんっ!」ファなんて吐いて捨てるほ「やめっ」どいるんだ。別にお前でなくても構わない」 「そんっ  !」   「   しずるに一目会えたら死んでもええ思たんやっ」  振り絞った声量は部屋を満たすほど大きく鮮明だった。  

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