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雪虫3 8

「あ゛  ?」 「し、しずるっ⁉なんで⁉うちはもう全部  」 「お前らが運命だとか、そんなどうでもいい情報は要らない」 「そ  っ!」  ごほっと咳き込んだオレの口から赤いものがびちゃりと床に零れ落ちる。  剥き出しのコンクリートにどす黒い赤が広がって……  思わず口元を押さえてうずくまる。 「しずるーっ!」  甲高い声が耳に届いたけれど、頭を上げずにぐっと拳を作った。   「大神くん、やりすぎだよ。手当てしないとまずいよ?これ」  瀬能が傍に膝を突く気配がするが、そのまま顔を伏せているといきなりぐぃっと髪を引っ張られ、冷たい空気に喉元がさっと晒される。 「構いやしません。どうせ消耗品なので」 「なんでっ!なんでっ  や、めっめてぇっ!」  ぶちぶちと毛の切れる音と、それからみなわの悲鳴と……  あとは自分の喉から勝手に出てくる呻き声が頭の中でわんわんと響く。 「ぜんっ  全部、うちがわかることは、喋る から  しずる、に、手当……せんせ、おねが  」 「隠しごとをすればこいつは処分する」 「  っ」  大神がみなわに見せつけるようにオレを振り回すから、髪の千切れる音が響き渡る。 「するっするからっ!」  その音を縫うようにみなわの声と啜り泣きが聞こえて…… 「そうか。今の言葉を忘れるな」  そう言うと大神はオレを一旦床に落とし、首根っこを掴み直すと荷物を引き摺るようにして階段を上がっていった。  ガツガツと段で足を殴られて……  明日は痣だらけだろうな と思いながら視線を上げると、鋭利な刃物のような目と視線が合った。 「お疲れ様です」  何事もなかったかのような直江の言葉に大神が頷く。  地下の淀んだような空気とは違い、地上の空気はすっきりとしていて肺に吸い込みやすい。  思わず「ふぅ」と深呼吸すると、大神が勢いよくオレを放り投げた。 「あだっ」 「自分で歩け」    乱暴に投げ出されたオレを見た黒服たちが、ざわ と動揺を見せる。  理由はきっと、オレの血まみれ  違うな、血糊まみれの姿のせいだ。 「ぅえっぷ。どろどろだし」  呻きながら、口の中に仕込んでいた血糊を入れていた袋を吐き出すと、直江がタオルを渡してくれる。 「お疲れ様」 「しずる、良くやった。水谷に殴られ慣れた甲斐があるな」  同じく直江からタオルを受け取る大神が、珍しくそうオレを褒めた。   「つっても鼻血と毛は自前なんですけど……」 「レバー食わせてやる」 「苦手なんだけどなぁ」 「海藻もつけてやる」 「あれ迷信らしいですよ」  軽口を返すオレに、大神は鬱陶しそうに片眉を上げるけれど咎める様子はない。  よっぽどご機嫌ってことなのか……?    

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