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雪虫3 12
別に雪虫の愛情を疑ってるとかそう言ったことじゃないんだけど、それでも第三者からこうして聞くとなんだか心がウキウキする。
「続き、話してもいい?」
「あっ!はいっ!」
少し呆れ顔の瀬能に向き直ると、瀬能は少し硬い表情だ。
「君と雪虫のことだけれどね」
「は、はい」
「えっちするの?」
「は、……は?」
出た言葉が間抜けすぎて、思わずさっと自分の口を押さえる。
「え、えっと」
「セックスする?」
「なっ なーっ!なっなっなっ」
オレの悲鳴じみた声が食堂にこだまして……人がいなくて本当に良かった。
「下世話な話じゃないからね」
何をふざけてんですかって返そうとする前に、瀬能にそう言われて言葉を飲み込む。
つい先日、やっと体を重ねることができたわけだけど……
「いや、まぁ、そりゃ、番 ですし」
項についた小さな歯型に手を遣ると、胸の内がくすぐったく思えて笑いが漏れてしまう。
「雪虫の体調をみながらですけど……できたらいいなって言うか 」
「だよねぇ」
気恥ずかしい話をしていると言うのに、瀬能の返事は呑気だ。
何を言いたいのかわからず、胡乱な目を向けると瀬能が慌てて手を振った。
「いやいや、からかってるわけじゃなくて。雪虫の体に関することだ」
「っ、はい」
別にからかいたいわけじゃない雰囲気に、真剣に返事を返す。
「雪虫の体は弱い。たぶん、君が思っているよりもずっと」
「……はい」
ほんの少し擦っただけでも赤くなる皮膚。
力も弱くて、自分で体温を保つことも難しくて、体力もない。
「セックスは生殖行為だ」
「は い 」
「雪虫は自分の命を支えることすらおぼつかない。だからこれ以上の負担を強いることはできない。もしそうなった時は 「子供なんかいらないっ」
言葉を遮るように叫んだオレを瀬能は咎めなかった。
「だったらいいんだ」
「オレは……っ雪虫が断然大事だし、雪虫に何かあるくらいなら子供なんていらないっ」
「雪虫側に避妊を求めることはできないから、君が細心の注意を払わなくてはならないよ」
「それくらい、当たり前です」
「しないのが一番だろうけど、君まだ若いからねぇ」
はは と笑われて、仕方がないだろうと体をぎゅっと縮めた。
瀬能だってそう言う頃はあったはずなのに、からかわれるのは腑に落ちない。
「普通のコンドームだとかぶれるから、僕の方でいいのを用意しておくよ。これ、きちんと使うんだよ?」
「 は ぃ」
照れくささに顔を見ずに頷く。
「使い方わかる?レクチャーいる?」
「だ、大丈夫ですよっ」
「外に出せばってのは避妊にならないし、つけ間違えたら新しいのに換えるんだよ?あと途中でつけても駄目だからね?」
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