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雪虫3 13
「~~~~っ!大丈夫ですっ」
「そう?あ、あとサイズ教えて欲しいんだけど」
「サイ……?」
「ち〇この」
「~~~~っ⁉」
決してセクハラ目的ではないと分かっているのにっいるのにっ……どうしてだか、そのすっとぼけたような表情のせいでいろいろと邪推してしまう。
「まぁ各種取り揃えてあるんで、明日にでも取りにおいで」
「はい」
「幸い今回は妊娠てことにはならなかったけど、十分に注意してね。……あ、なんなら「去勢しませんからね」
言葉を取られて、瀬能は面白くなさそうに片眉を上げてみせた。
その子供っぽい行動に胡乱な視線を投げかけると、「はは」と軽快な笑い声が上がる。
「タクシーを呼んであげるから今日はもうそれで帰りなさい」
「や……でも、走って帰らないと」
「たまには休息も大事だよ」
瀬能はそう言うと手の中のカップを取り上げて促すように席を立つ。
それを見上げて、悩んでいたことが引っ掻き回されてすっ飛んで行ってしまったことに気づいて……
飄々とした横顔に人が真剣に悩んでるのにって文句の一つも言ってやりたかったけれど、飲んだホットミルクが美味しかったから何も言わずにおいた。
肩からずれたショールを直してやると、雪虫が不安そうに見上げて来て……
毎回のことなんだけれど、これをされてしまうとオレの「帰ろう」って決心が揺らいでしまう。
「しずる」
「ごめん……この後、仕事で……」
家庭を省みない夫のようなことを言ってしまったけれど、実際にこれから大神関連の仕事だ。
研究所の仕事だけならもうちょっと雪虫の傍に居られるのだけれど、どうしようもない。
「……」
ぷく と頬を膨らまして拗ねてるアピールをするのはセキの癖が移ったんだって最近気づいた。
柔らかでふわっとした頬をちょんちょんと突いて、「ごめんな」って言葉を重ねる。
大神くらい稼いでいたら、好きなだけ雪虫の傍にいられるのかな?って思うけど、大神は大神で忙しそうだし、人生そううまくはいかないんだろう。
「セキもいるし それに……」
そう言いながら、もう一人の顔を思い描く。
以前からセキの都合が悪い時、代わりに雪虫の世話をしてくれていた人物の顔を思い出してなんとなくしかめっ面になる。
「……それに、うただっていてくれるから……」
言葉がなんとなくすっきりしないのは、悪い奴じゃないってわかってはいるけれどどことなくオレに突っかかってくるような気配があるからだ。
大神のようなその手の人間が大嫌いなせいかとも思うけれど、雪虫たちとオレに対する態度の違いに思うところがあるのは確かだった。
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