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雪虫3 18

 みなわに、真実を突きつけるのは簡単だった。  ────いいように使われてんだよ  短いその言葉が口を突いて出ないようにぐっと唇を噛み締める。 「……君、仙内の言葉を信じたの?」 「しん……?」 「随分と久し振りに会って、しずる君が子供だって言われて」 「しん……信じるも何も、和歌が言うてるんやで?」  ぱく と瀬能が口を開こうとしてやめてしまう。 「……そう言えば、番契約はしてないのかい?」 「っ……それは……」  瀬能から出された言葉に明らかな動揺を見せ、みなわは細い眉を下げてオレに視線を向ける。  どうしてみなわの番契約の話をするためにオレを見なくてはならないのか…… 「……うち、が、だ、めな、子、やから」  「は?」と思わず声を漏らしたオレに、みなわは申し訳なくて恥ずかしくて堪らないと言いたい様子だ。 「ご ごめ  な?こんな、うちが、親で……」 「や……何言って 」  寂しそうに微笑んでみせるみなわは、心底申し訳なさそうにしている……けれど、やはり感じた奇妙な違和に…… 「でもっ和歌はほんまにすごいから!……しずるは、和歌によう似てるから、安心してええよ?」 「仙内はどうすごいの?」  瀬能の言葉にみなわの視線がさっとそちらを向いて初めて、自分が息を詰めていたことに気が付いた。  嫌な汗に塗れた額に手をやって、出来ることなら唸りたい気分だったけれど、仙内のことを嬉々として喋り出したみなわの邪魔をしてはと拳を作って堪える。  先ほどまでの表情を微塵も感じさせない様子は、まるで中身が入れ替わってしまったんじゃないかって思えるほどで、平然と質問を繰り返す瀬能の精神力が驚きだった。    オレでもわかるのだから、瀬能がこの異様さに気づかないわけがない。  それでも何事もないようにしているのだから、こうなることを予想していたのか……  殴られて、縛りつけられて、脅されて、……なのに仙内のことを話すその目はきらきらと光を弾いて、興奮しているのか瞳孔が開いている。   「今回、どうして引き受けたの?」 「どう?  やって、和歌が、  」  和歌が。  繰り返される言葉は真実かもしれなかったが、だからと言ってどうしてそれを受け入れてしまったのかなどは一切話に上がらない。  和歌が、言ったから。  無条件に飲み込んでしまえる理由を、客観的に言わせてもらうなら「運命だから」だろう。  自分自身だって繰り返し使ってきた言葉だった。  けれど、この違和感はなんだろうか?  みなわを見ていると酷く不愉快な気分になって……  二人の会話を聞いておかなくてはと思うのに、気持ちの悪さにそれができない。  

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