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雪虫3 20

「あの……もっと、こう……他の店とか、なかったんですか」 「うん?あー若い子は嫌がるかな?」 「嫌がるって言うか  」  どうせなら焼肉とか連れて行って貰えた方が嬉しい。  どこに何が入ったかわからなくなるような、畏まった洋食よりはむしろ立ち食いソバなんかの方がいい!  ……とは言え、瀬能が立ち食いソバで麺を啜ってるイメージなんて湧かないんだけど。  運転があるからって水を飲んでるけど、赤ワインをグラスに入れてゆらゆらさせてる方が似合っているイメージだ。 「もうちょっと気楽なとこの方がいいかも」 「気楽……」 「いっそテイクアウトでも良かったり」  こんな上等なトコに来るよりは、そっちの方が嬉しいと思ってしまう辺り、オレはどこまで行っても貧乏庶民なんだろう。 「あぁそうかぁ、君でそう言うならあの子はもっとだろうなぁ」  息子とこう言うようなとこに食事に来ようと思っていたのかもしれない。  オレに微妙そうに言われて、瀬能はしょんぼりとしょげて見える。 「まぁ、あんま若い子向けではないと思う」 「そうかぁ難しいなぁ」  ふぅ と溜息を吐くから少し会話に間が空いて……    本当は聞かない方が良いんだろうけど、それでもオレを呼ぶ声にほだされてしまったのかもしれない、ついみなわのことを尋ねてしまった。 「あの人は、この後どうなるんです?」 「どうなると思う?」  何をわかりきったことを聞いて来るんだ と返されると思っていただけに、問い返されて面食らった。  そんなのオレが知るわけないでしょ……と返すには、いろいろ知識がありすぎた。  幸いジジィたちは生かされているようだけれど、大神に怪我を負わせてあんな大騒動まで引き起こしたんだから、ただで済むはずがない。  情報をすべて聞き終えたら…… 「……しゃ、釈放?とか」 「どうして大神くんが僕に大金を払ってると思う?」 「……」  カチャン とナイフが皿に触れて小さな音を立てた。  瀬能の目の前で細かく切られていく肉を見て……何も言えずに下を向く。 「僕にしかできないことって言うのがあるわけさ」 「それは  」 「ここで説明する?」  ナイフについた肉汁が滴る。  普段ならおいしそうだと思うソレも、今この状況では何とも言えない気味の悪いものに見えて…… 「まぁもう少しいろいろ聞きたいから、心配しなくても、もう少しの間はあのままだよ」    そう言ってぱくりと肉を口に運ぶ。    その姿は普段と何の変りもなくて、オレと瀬能では話している内容が違うんじゃないかって思わせるほどだ。  けれど、確実なのはすべてを聞き終えたらみなわは……

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