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雪虫3 21
「 」
オレが、深く考えずに飛び込んだ世界はそんな世界なのか と、綺麗に盛り付けられた皿を見て思う。
不慮の事故なんてものがあるにはあるけれど、それ以外で命を落とすことなんて考えられもしない生活をしていたオレからしてみたら、悪夢の話をされているかのようだ。
「食事は美味しく食べるものだよ」
「あっ……はい」
とは言え、知っている人間が命を落とすのだと言われて食欲が湧くわけもなく。
「怖い?」
「は?へ?」
「今からでも大神くんに断ってあげようか?」
「なん、 ?」
ふふふ と笑いながら口元を拭う瀬能は相変わらずの胡散臭い笑顔で、何か下手なことを言ったらまずいのではと思わせる。
「僕は君のことを意外と買っていてね、できれば長く僕の研究に携わって欲しいわけさ」
「それは このままいくと、長く関われないってことですか?」
「まぁ」
飄々と人の生死を語る姿は……
「話を聞く限り、雪虫を連れ戻しに行って生きて帰れたってのが不思議なくらいだからね」
そう言われてフォークを下ろす。
あの城の地下で、襲われたオレが殺されなかった理由はわからない。
ただ運が良かったのかそれともそれ以外の理由があったのか?
あのたった一瞬で、オレは今、ここに居なかったかもしれない。
「────っ」
「そんなことになるよりは、僕の傍で手伝って欲しいわけなんだ。大神くんだって僕が言えば否とは言えないはずだよ、もともと君にはこちらを手伝って貰う予定だったからね」
「……」
それを両方手伝うと言い出したのはオレ自身だ。
雪虫を悲しませたものが許せなくて……
ただ、それだけで……
「まぁちょっと真剣に考えてみたらどうかな?」
「オレは……」
それ以上言葉が出なくて、辛うじてテーブルに乗せていた手を膝の上に下ろした。
研究所には談話室のようなものはなくて、食堂がその代わりになっている。
大騒ぎするのはさすがにできないけれど、数人で集まってワイワイと話す分には十分な場所だった。
そこに、雪虫を見つけて立ち止まる。
輪の中に、いる。
「…………」
雪虫だってここで暮らしているのだし、同じ保護されてきたΩ達も多いから交流が増えるだろうことは予想していたけれど、人見知りでもあるのだしこんな風に人の中に入って行くイメージはなかった。
傍にセキやうたがいるからこそ参加できているんだろうってことはわかるんだけど、それでも……
なんか、寂しい。
声をかけて連れ出すこともできたけれど、以前に瀬能がΩは群れたがる傾向があるよって言われてたのを思い出してしまうと、無理にあの場から引き剥がすことも良くない気がしてしまい。
もじもじと入り口でその光景を眺める。
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