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雪虫3 31
くらくらと感じる酩酊感に理性を揺さぶられながら、そろりと服の上から薄い胸に手を置いてみる。
「ひゃっ」
上げられた声は微かだったけれどオレを飛び上がらせるには十分だ。
「わっ!ごめっ ごめん……えっと……触っていいかな?」
「 ん」
オレがどう言うふうに触るか想像したのか、雪虫はちょっと恥じらいながらゆったりとしたシャツの裾を両手でたくし上げ、これでいいか?と問うように首を傾げる。
雪原のように、シミ一つない白肌にそこだけが赤く色づいて……
番になった時は、もう一つ一つの感想なんて考えられないくらい頭の中が煮えたぎってて、ただただ雪虫を傷つけないようにすることだけで精いっぱいで、まじまじと見るのはこれが初めてだ。
骨が浮き出すほど細い胸の上にふっくらとした可愛らしい頂があって、それがなんとも愛おしく思える。
「さわ さわるよ?」
「い、痛くしないで、ね?」
「っ!ごめんな?オレ乱暴だったよな?」
「や、ちがうの。そう言えばいいよって、みんなが 」
みんな……と口の中で呟いて、朝の集まりを思い出す。
瀬能に言わせるとΩが群れたがるのは情報収集のためだそうで……ソレがナニの情報収集なのか聞きはしなかったが察してしまうと言うものだ。
αを繋ぎとめておかなくてはいけないΩ達は、情報交換をして手練手管を磨くんだろう。
「……みんなはそうかもだけど、オレは雪虫にそんなこと言われたら心臓が止まりそうになるから、お願いだからやめて欲しいんだけど な?」
「ダメ?」
「ダメじゃないけど、オレが雪虫に痛い思いさせたのかなって思ったら 」
萎えるってわけじゃないけど、エロいことを考えようって気にならなくなっちゃうから……
「元気なくなるから」
「!」
オレが驚いた時以上にショックを受けた様子で雪虫ははっとすると、しょんぼりとした様子だ。
「でも、雪虫もしずるを喜ばせたいんだけど」
「……」
そこに居てくれるだけで って言っても、雪虫は納得しなさそうだからしかたなく咳ばらいを一つした。
「じゃあ、嘘とかごまかしたりせずにオレがすることの感想教えてくれる?」
「?」
「雪虫がどう思ってるか全部知りたいんだ」
「? うん」
返してくれる返事は心細げで、どう言うことか理解はしてないのかもしれない。
とりあえず、そっと剥き出しになったままの胸に、先ほどのように手を置いた。
「……」
そのまま窺うように雪虫に視線を遣ると、はっとしたように「あったかい!」て返事が来る。
あまりにも率直な感想にコケてしまいそうになったけど、それでも素直な言葉が嬉しくて顔がにやけた。
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