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雪虫3 36
オレが、ジジィたちの……少なくともどちらかとは血が繋がっていないのはもう否定しようがない。
そうでなければαのオレが生まれることはないんだから。
「……聞きたいことはないけど……話したいとは……」
大神はオレの言葉が意外だったのかわずかに首を傾げる様子を見せた。
「何を話すんだって言われても、ちょっとまだ、まとまってないんだけど」
「そうか」
「もし、もしさ、みなわになんの悪意もなくて、仙内?の仲間とかじゃないんだとしたら 」
「だからどうした」
そう言うと大神は直江に向かって顎をしゃくる。
端から見て、それで意思の疎通ができているのが不思議だけれど、直江はさっとレバーを焼き始めた。
「ただ、利用されたんだって、分かったら 」
「仙内を運命だって言っているオメガの何を信じろと?」
「あっ……でも……だからって……」
血だらけで、目を逸らしたくなるようなあんな姿でオレを呼び続ける人を、ああそうなんだ と見捨てるには……
「焼けましたよ」
口ごもるオレを置いて、直江は目の前の皿にレバーを積み上げていく。
「チャ……チャンス を。説得できたら、味方になってくれるかも!それにっそしたら仙内の情報をこっちに流して貰ったり 」
「お前は使い捨てたオメガにまた連絡を取ろうと思うのか?」
「! お、オレは……捨てたりしない」
ふん と鼻で笑われてしまうと、オレがどれだけ調子のいいことを言っているのかひしひしと感じられて、項垂れて山にされたレバーを見詰める。
丁度食べごろに焼かれた表面の焦げ目を見ていると、みなわの固まった傷を思い出す。
それは振り払おうとしても振り払えるものではなくて……
オレを息子だと言ったから気にかかるのか、それとも知り合いだから気にかかるのか、もしくはαとしてΩを庇護しなければと思っているからなのか、みなわが気にかかる理由を見つけ出すことはできなかった。
そろり と階段を下りて行くと、異臭が鼻を突く。
「……」
とっさに瀬能を振り返るも、促すような視線を返されただけだ。
怯える小動物の気分で地下に降り立ち、場違いなほどの明るさで照らされているみなわに視線を遣った。
椅子に拘束されたまま項垂れたその姿は、随分と衰弱しているように見える。
……いや、実際、あれからずっとここで拘束されているのだから……
「……あの 」
どう声をかけていいのかわからずにそう声をかけた。
昨日までは音がしたら反応していたのに、今日は顔を上げることすらしない。
「 ぅ 」
微かな呻き声が聞こえて、ゆっくりと頭が持ち上がる。
元々折れそうなほど細い印象だったのが、目の周りが落ち窪んで肌の色が悪いせいか更に細く見えた。
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