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雪虫3 39

「たまには倫理に触れるようなこともしてみたいわけさ」 「……それ……は…………」  どう言ったことをされるのか?と、問いかけようとしたけれど、その言葉もうまく口から出てくれない。  今でもちょっと人権無視してるんじゃないかってこともされるのに、はっきり宣言してから行われる行為はいったいどれほどのものなのか…… 「それで、た 助けてくれる のか?」 「んー。君も覚えているだろう?僕が実験のために欲しいって言ったら、大神くんは融通してくれるんだよ」  ちら と瀬能の視線がオレの顔を撫でる。  ズキズキと痛み続けるそこがどうなっているかなんて百も承知だ。   「怒ることもなく、二つ返事でね」 「っ……じゃ、じゃあ……そ、それで、いい からオレを実験に使って「何言うてんねんっ!」  オレの言葉を遮るみなわの声は鋭い。  瀬能の言葉を聞いてオレの顔色が悪くなったことに気が付いたようで、椅子のガタガタと言う音が激しく鳴り続ける。 「子供を犠牲にして親が生き残るなんてあり得へんやろっ!」 「親を見殺しにする子供もいないだろっ!」  怒鳴り返すとほんの一瞬だけみなわが怯んだ気配がした。  けれど、それも一瞬で…… 「先生っうちは自由にしたらええ!でもしずるにはこれ以上手を出さんといてっ!なぁっ!お願いやからっ!」  地下に響き渡る声が反響して消えると、耳が痛くなるような静けさだけが辺りに広まって、オレは自分の心臓の音をうるさく感じていた。  ふんふんと鼻歌を歌いながら瀬能は手の中のナイフをくるくると回す。  いつもはせいぜいペンくらいしか回さないのに と眺めていると、キラキラとした光がナイフに反射して煌めく。 「…………」 「どうしたの?そんな顔して」  くるりと手首を返すから、ナイフの表面がこちらに向けられて……痣のできたオレの顔を映す。  紫と黄色の斑模様で酷い顔だと我ながら思うし、癖になってしまったのかちょっとした拍子に鼻血が出てしまうようになってしまった。  返事をしないことを不思議に思ったのかキョトンとした顔のまま、瀬能はそのナイフで手紙を開封するとそそくさと引き出しに片付ける。 「で、なんの話だったっけ……ああ、そう、みなわくんだ」 「……大丈夫なんですか?」  ぶっきなぼうにそう尋ねると、瀬能はちょっと眉を上げて窺う表情を作ってみせた。 「うん、順調に回復してるってよ」 「……そう ですか」  明らかに暴行を受けたみなわをなんと言って入院させたのか聞いてみたい気もしたが、黙っている方が吉だろう。  

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