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雪虫3 43

   驚きと恐怖に見開かれた目は庇護欲をそそるような形の良い大きさで、縁どる長い睫毛には大粒の涙が限界まで飾りつけられていた。 「あっえぇと……御厨さん?」  真っ青な顔色で怯えるさまは、御厨よりもオレの方が加害者のように思わせる。 「えっあっそのっ」  どうしていいのかわからずに、ぽかんとオレを見上げているみなわに視線を移す。  何かこの空気を破ってはくれないかと思ったのだけれど、みなわは気まずそうに視線を逸らして俯いてしまった。  こうなってしまうと……オレは自分自身でこれをどうにかしないといけないんだろうか?   「すみません、みなわに何かするんじゃって思ってしまって」  そう言って手を離しつつも、とりあえずみなわと御厨の間に入り込んでもしもの時に備える。  相手が大神ってわけじゃなし、何かあったら小柄なΩ男性ならなんとか取り押さえられるだろうって思っているんだけど…… 「……っみなちゃんっ……この人、って  」  オレとみなわを交互に見て、御厨の小さな口がぶるぶると震える。  青を通り越して色を無くした顔でみなわを見るけれど、みなわは顔を上げる気はないようだった。  これがどう言う状況かまったくわからなかったけれど、ただただ気まずいと言うことだけはわかる。 「しずる は  うちの、大事な人」 「っ⁉」  びくっと体を跳ねさせた御厨は今にも泣き出すか崩れ落ちそうな雰囲気でオレを見上げてくるけれど、崩れ落ちたいのはオレの方だ。  さすがに鈍感なオレでもなんとなくわかってきたのは、以前にみなわが恋人がいてその人がΩだと言っていたためで、二人の間に漂う雰囲気を考えるなら御厨がそうなんだろう。  みなわがあんな紹介の仕方をするから、御厨にとってオレはみなわにちょっかいを出した間男でしかない。  だからって息子だ……と言うと、ますます自分の首を絞めてしまうのはわかっている。 「お……置手紙だけでいなくなってっ僕がどれだけ心配したかわかってるの⁉なのにっ なのに……」 「て、手紙だけでもあるだけましやろ」 「出てくって一言だけじゃわからないよっ」 「それ以外に言いようがなかったんやからしょうがないやろっ!」 「じゃあっ……じゃあ今説明して……」    オレの目の前で御厨の両目からぼろぼろと真珠のような涙が溢れて、引き裂くような泣き声を押し殺した嗚咽が微かに耳を打つ。  『君も大神くんもオメガには甘いよねぇ』なんて、瀬能の言葉が脳裏に過らせながらもう一度二人を見比べた。  修羅場をどうにかするには、腹を括るしかない。 「もーっ!父さんはなんでも自分で抱え込むんだからちょっとは相談した方がいいよ!」  大声を上げたオレを見る二人の目が一瞬でまん丸になる。  

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