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雪虫3 47
大神はαだ。
そう言い切れるのに、大神も……かかりつけである瀬能もβだって言い張る。
ただ、あんまりしつこく言うからって一度、目の前で検査して見せてくれた時……結果はβだった。
あの時は、オレの鼻も当てにならんなって鼻で笑われたけど……
「しーずーるー」
小さな手にぽこぽこと胸を叩かれて、はっと視線をそちらに移す。
これでもかってくらい膨らんだ頬は可愛くて、思わず両手で挟み込んで堪能するように揉んでしまう。
「もぅ!」
「ごめんて。もう他のこと考えたりしないから」
「ホント?」
「ほんとほんと」
みなわのことはー……真実を教えて裏切られても困るし、顔を合わさないようにして勘違いさせたままにしておけばなんとかなら……ないだろうけど、正直オレにはいい解決方法なんてわからない。
これは瀬能との要相談案件だ。
何はともあれ、目の前の雪虫以上に気にかかることなんてないんだから。
「あー……柔らかくてきもちぃ」
「ほっぺだけ?」
「?」
きょとんとしたオレに焦れたのか、雪虫は頬を撫でていたオレの手を自分の胸元に持って行く。
柔らかで薄めの生地の向こうにあるふかっとした感触と頼りない体温に……
「ふわっ⁉」
「うん?」
ふわふわっ!
「じゃ、なかったっ……~~~~っな、何して 」
「もむ?」
「もっ」
揉みたいけどっ!
「吸ったり、なめたりして、いいよ?」
そう言うとシャツの裾を一生懸命に手繰り上げて、「ん」と胸を反らして見せてくる。
以前より体調は良くなったとは言っても、もともと食事もわずかしか食べない雪虫の体は痛々しいほど細い。
なのにオレに見せようとしているそこだけはほんのりと肉厚で、柔らかい。
「あ あ ぁ あ……ぁぁぁぁぁ」
「しずる?」
がばっとクッションから起き上がり、本当なら力一杯抱き締めたいところをぐっと堪えてふわりと優しく抱き締める。
オレからしたら力を込めていないはずなのに、腕の中の雪虫は少し苦しそうだ。
「どこでそんなこと覚えてくるんだ!」
「! ……こういうの、きらい?」
吸い込まれそうな瞳に見詰められれば否なんて言えるはずもなく。
「そうじゃなくて……」
体勢を変えたからオレの息子スティックが雪虫の尻の下で悲鳴を上げている。
ただ一緒に寝転がってるだけでヤバいって言うのに、こんなことまでされてしまうと本当にまずい!
「みんなすきっていってたのに……」
自分の行動が外れたことにショックを受けたのか、雪虫はしょんぼりと項垂れる。
「皆って」
聞くまでもないけど、食堂のクループだろう。
……ナイス!って言いたい気持ちと、余計なこと教えんな!って気持ちで頭の中がぐるぐるだ。
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