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落ち穂拾い的な 指輪の代わりに

 そわそわと周りの雑踏を見回す。  別に疚しいことをしているわけではないのだけれど、雪虫以外のΩと連れだって歩いていると言う罪悪感に目の前を行く二人のΩにジト目を向ける。 「ちょ、なんでそんな離れるの⁉」 「しずるの買い物なんでしょ?貴男が先頭行きなさいよ!」 「あ、うん……うん……」  返事はしたが二人の前に出る気になれないまま辺りを見回す。  うたはともかく、セキがいる段階で大神の監視の目があるんじゃないかと思うと、気軽に友達だからと肩に手を置くのも憚られる。  だって、後で何されるかわかんないし。  あのおっさん、めっちゃ妬くから…… 「ほーらーっ!何にするか決めたの?」  突然うたに顔を覗き込まれて、その距離感のなさにたじたじと後ずさる。 「お前なっ!近いよ!」 「何よ、近いくらい」 「ちかっ……近いのが問題なんだろ⁉オレはアルファなんだぞ⁉」  うただって抑制剤を飲んでるだろうし、オレだって自衛してるけど何があるかわからないし、第一バース性を抜きにしても男と女なんだからちょっと距離を考えて欲しい!   「しずる、貴男ちょっと自意識過剰じゃない?」  しれっとそう言われて怒りも湧くけど、だからって何かやり返すなんてしょうもないことしたくはない。 「~~~~っ!もういいよっ」 「それでー?目星は?」  今度はセキに尋ねられて、ちょっと照れながら「やっぱ指輪かなって」って言うと二人そろって虫けらを見るような目を向けてくる。 「えっえっだってっ番になった記念なんだし……やっぱ、そう言ったものが  」 「雪虫、金属ダメだろ?」 「かぶれちゃうわよ?」 「あっ」  婚約指輪も兼ねて……なんて考えていたオレの考えにピシリとヒビが入った。  やっと番になれたし、少しだけれどお金も溜めれたし……三か月分とは行かないまでも……と思っていたのに。   「それに指輪のサイズとかわかってる?」 「サイ……えっと、細い?」  はぁぁぁぁ と二人そろって溜息を吐かれて…… 「あ、え、あの」 「せっかく付き合ってあげてるのにねー」 「ねー。何選んだらいいかわからないって泣きついてくるから、ついて来てあげたのにねー」 「ねー」  反論しようとした言葉をぐっと飲み込む。  二人の冷ややかな目に身を小さくするしか、今のオレに出来ることはない。  意気揚々と街に出たオレのあまりのしょげっぷりに、からかう気満々だった二人もその内おろおろとし始めて……  結局その日は二人に昼食を奢ってもらっただけになった。 「  あ」  とっさに足を止めてショーウィンドウにさっとしがみつく。  オレの視線の先には六角の形を持つ金色のブローチがあって……  はめられた小さな宝石がチカチカと日の光を反射して、華奢な作りなのにはっとするような存在感を見せてくる。  指輪は駄目だけれど、雪虫がいつも使っているショールを留めるにはぴったりだと思った途端、指輪の代わりはこれしかないって言う妙な確信が生まれた。  綺麗な雪の一片がそのまま雪虫を表わしているようで……  オレははやる気持ちを抑えながら店へと飛び込んだ。 END.    

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