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落ち穂拾い的な なぜわかったのか
「特定の特徴のある人間ばかりが消えたら、何を疑う?」
唐突に投げかけられた問いに、車外を眺めていたしずるは飛び上がるような反応を見せた。
それもそのはず、先ほどまで大神はむっつりと押し黙って何かを考えているようだったからだ。
なんの理由もなしに突然襲いかかってくるような人間ではないと知ってはいたが、それでも初対面の際の暴力やその後の態度や圧を感じさせる体躯から、しずるは二人きりの時はできるだけ息を殺して自分はいないものと思ってもらうように努めるのが癖になっていた。
先ほどの問いかけも、聞かなかったことにしようとしたが睨まれてしまうとそうもいかず、しぶしぶと思考を巡らせる。
「え……っと、なんかの目的のための誘拐?かなって」
「そうだな。一人二人……もしくはある程度の少数なら偶然もあるだろう。だが、数が増えるとどうしても目立つな?その場合どうする?」
どうすると問いかけられたところで……としずるは文句を言いそうになったが、直感がこの話題を流してはいけないと囁きかけたためにぐっと言葉を飲み込んだ。
「どうって、えっと、ばれないようにする?から……必要ない人間も同数以上攫う……は手間がかかりすぎるのかな?あー……欲しい特徴がわかりにくい人を攫う?」
自分自身の言葉に、しずるははっと口を押さえる。
「特徴を誤魔化すにはどうしたらいい?」
「特徴が 」
緊張で口が乾いたせいか、しずるはざらつく唇を舐めて濡らす。
「特徴がバース性なら…………バース性を誤魔化す?」
「そうだな」
誤魔化す?そんなことできるんだろうか?
自分自身で言った言葉に疑問を投げかける。
自身のように両親がβなら偽ることもできるだろうが、バース性のチェックは今や出産時の必須で産院での検査が義務づけられている。もし、産院が共犯で……と考えることもできたが、以前に教えられたΩ性の行方不明者の数を考えるとそれは現実的でないと思えた。
「オレ達はブギーマンと呼んでいる。素性、背格好は一切不明だ。ただわかっているのは、こいつがかなりの数の赤ん坊を入れ替えたと言うことだ」
「入れか……それって特徴を消すため……?」
「そうだ。オメガやアルファをベータ性や無性として育てる為だ。入れ替えてやるだけでいい、余程のことがない限りバース性の再検査はしなからな。入れ替えたまま放っておいて、育った頃に迎えに行けばいい」
「……え」
「オメガが百人消えればそれを目的とした誘拐事件と分かるが、無性やベータの混じった百人が消えれば、それは誘拐か失踪か、事件性があるのかないのか、関連があるのかどうなのかを調べるのは困難だ」
「……そん 」
「年間八万人から十万人の行方不明者の中で、いったいどれだけの割合をオメガが占めるのか 」
じっとりとした嫌な雰囲気に、しずるは救いを求めるように運転している直江の方へと視線を投げる。
けれどもちろん、直江が振り返ることはない。
「その、ブギーマンってのが、仙内 なのか?」
「おそらく」
大神にしてははっきりとしない返事だった。
「そん な、沢山入れ替えて……気づかれるだろ?」
「バース性の人間は未熟児で生まれるからな」
すぐに保育器に入れられ、母体の状態によっては長い間抱くこともままならない。
そんな状態でやっと顔を合わすことのできた子供が自分の子かどうか、疑うはずもなく……
「……」
待ち望んだ子供が入れ替わっていた と言う事実に、しずるは胸は詰まるような嫌な気分を感じた。
END.
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