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落ち穂拾い的な なぜわかったのか2

「そんなこと、本当にできるんか?」  言葉で言うのは簡単だったけれど、バース性の違う子供を入れ替えて……なんて実際はできるものだろうかと、しずるはぶるぶると首を振った。 「それに、入れ替えた人間を一人一人管理するのも……」 「管理する必要はないと言っただろう。使える頃に迎えに来ればいいだけだからな」  使える とは、何に使うと言うことなのか……  しずるは以前に大神が言っていた言葉を思い出して、やはり首を振る。 「セキはオメガとして売られそうになっていた」 「……」 「無性として登録されていたのに、だ」  それは、セキも入れ替えられた被害者の一人だと言うことだ。  そして、……おそらく自身もだ としずるは昏い目を両手で覆う。 「セキのバース性を母親に教えたのは誰だ?」  まだ続く問いかけに、しずるは返事をしたくなかったけれどそう言うわけにもいかない。  落ち込む間も与えられないのか と、呻きそうになりながら言葉を紡いだ。  「匂いで誰だって気づくだろ?」  α、β、Ωの匂いの違いは顕著で、それらを間違えることはないとしずるは断言できた。  だから、フェロモンがわかれば誰だってわかるだろう と鼻で笑うように告げる。   「俺やお前レベルで鼻がよければな?」 「え……」  そうだった と、目を覆っていた手を下ろすと、厳めしい顔がしずるを見ている。 「だって、発情したら……わかる……」 「保護した時、セキはまだ発情したことがなかった」 「で、でも、入院したりしたら検査するだろ?」 「セキが入院した記録はない。公式のもので、セキのバース性を確認したのは産院での検査が最後だ」 「……じゃあ、どうやって」 「じゃあお前がアルファだと気づいたのは?産院での検査ではベータだったろう」 「……知らない。いきなりそう言われた」 「入院や、検査はしていなかったはずだ」  そうだ としずるは息を飲む。  自身のバース性について、他のβとは違うと思っていたけれど、はっきりとαだと言われたのはある日突然だった。  その前にバース性検査のようなものは受けた記憶はなく…… 「……」 「赤子を入れ替え、時折様子を見て使えるタイミングを測ればそれでいい。それだけで管理は随分と楽になるとは思わないか?」 「そん……な。…………タイミングって言うのは…………ヒート?」 「初めての発情期での受精率は異常に高い。ほぼ妊娠すると言ってもいいくらいだ」  あっさりと肯定の言葉を返されてしまい、しずるはぱくぱくと唇を動かすしかない。 「効率的だろう?オメガに子を産ませたがる奴らは多いからな」 「……こう りつ、とか、物じゃないんだから……」  物 と、自分で言った言葉に傷つくようにしずるは項垂れた。  同時に、雪虫が攫われた時に雪虫を物のように言った言葉を思い出して、ぶつけようのない怒りを覚える。 「お前くらい鼻が良ければ、傍でタイミングを見てヒート前に攫うことも容易だろう」 「オレ……くらい……タイミング……」  「セキの時は母親の情夫だった。お前の時は、柄の悪い親の友人だったんだろう」  そう言われて記憶の中の、親の友人を思い出そうとして眉間に皺を寄せた。  幾人かははっきりと、その言動まで思い出せるのに一人だけはっきりとしない人物がいる。    思い出す と言うよりは、積み重ねたノートを幾らめくってもそこだけが乱雑に消しゴムで消されてしまったかのように朧気で、しずるは目の前の大神と同じように険しい表情を作る。 「…………」  与えられた情報の内容をうまく飲み下せないまま、しずるは「オレと同じ」と言う言葉をもう一度繰り返した。   END.

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