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狼と少年 4

「待て、なんだそれは」  大神の声は警戒しているようにも聞こえるし、呆れているようにも聞こえた。  けれどセキはそれがおかしくて、口の端をにまりと歪ませる。 「なんだと思います?」 「それは  」  ブ と言葉に出しかけて飲み込み、「下着だろう」と低く言う。  声に出すのがはばかられたせいか、大神の態度はどこかギクシャクとして見える。 「そうです」  セキはあっさりと肯定すると、貝で出来たボタンをはずし始めた。  そうすると白い生地に浮かび上がっていた薄い豪奢な黒レースがちらちらと隙間から顔を覗かせて…… 「っ  なんてものをつけて会ったんだ」  声は低く怒りを含む。   「上着着てたら誰にも見えませんもん……どうですか?こう言うの……」  指先でくぃっと引っかけるようにしてシャツを引っ張ると、そこにはレースのあしらわれた小さな生地が張りついている。  明らかにブラジャーの形を取っていたが、小さな三角の布地には中央に切れ目が入り普通の形ではない。 「お好きですか?」  シャツのついでとばかりに指先で黒いブラジャーを引っ掻くと、そこからピンクの可愛らしい突起がちらちらと誘惑するように顔を覗かせる。  白い肌と対をなすような黒い下着、それから艶を含む桜色を見て大神はぐっと眉間に皺を寄せた。 「っ  っ  ……何を着ているんだ」  わずかな呻きは言葉を選んでいたのかもしれない。   「番が欲しい人間の前でそんなことをしたらどう言う結果になるか考えなかったのか。肩を触られただけですまなかったらどうするんだ」  怒鳴られて、さすがにセキは小さく身を縮めた。 「ち、違います!」 「何がだ」 「大神さんに会うからつけてきただけで……正直、マッチング相手なんてスパイス程度にしか  っ」  つい零れた言葉にセキははっと口を押さえる。  自分に番を作りたがっている大神の前で言う言葉ではなかった と、そろりと窺うように顔を上げた。    怒られるのだろうか……と怯えるセキに対し、大神ははぁと溜め息を吐いただけだ。 「……何度も言ったな?番を見つけろと」 「もう見つけてますもん」  ぷくーと膨らませた頬を大神の胸板に押し付け、わずかの隙も邪魔とばかりに体を押しつけると、セキは大神が突き放してくる前に言葉を続ける。 「オレの番は大神さんだもん。それ以外いないから!」 「ベータの人間に何を言い出す」 「ベータだからとか、そう言うんじゃなくて」  そう言うとセキはネクタイを外した時と同じ素早さでベルトを外して、スラックスをずらす。 「おい」  胸からなだらかに続く肌の先には黒いブラジャーと揃いだとわかる、やはり面積の少ないレースのパンツがあった。

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