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おはようからおやすみまで 18
だから、こんなにはっきりとした意志を向けられるのは初めてで……悪寒に似たぞわぞわとした感覚に体中に鳥肌が立った。
αにはっきりと捕食対象として見られた瞬間に、足元がすべて崩れ落ちて行くような、内臓がすべて抜け落ちるかのような不安感に襲われて……
でも、
だからと言って、
オレには誰も頼れる人はいない。
朝起きてから眠りに就くまで、オレには味方なんて一人もいなかった。
ごん と床で頭が跳ねて、それで脳味噌が揺れたのかどうなのかわからなかったけれど、視界がブレてそれ以上抵抗らしい抵抗ができなかった。
「な゛……っや、ゃ゛っ」
熱さで焼けた喉の奥から絞り出した拒絶の言葉はヒィヒィと言う短い呼吸にかき消されて、オレにまたがろうとしてくる奴らには聞こえてはいないようだった。
もっとも、聞こえたからと言って……オレのフェロモンに興奮したこいつらには何を言っても無駄だっただろう。
幾本の腕がオレを押さえつけて、はぁはぁと短い息を吐き出しながら涎を滴らせてくる。
「ゃ゛ ……っ薬、な゛ん゛て……っ」
喉を掻きむしりたくなうような体内の熱さと、オレをひん剥こうって手から逃げたくて手足を懸命に振り回していたはずなのに、素肌に触れられるとそこからじわっとした毒のような何かが流れ込んできて、そうなるともうその手に縋るしか出来なくなった。
「ははは!あやしーって思ってたんだけどさ。ははは……」
いつもの先輩の高笑いがひゅうひゅうと言う呼吸音に掻き消え、オレを見下ろすその目はαのものだからと言うよりは、獣の……ケダモノの目だ。
先輩以外にも数人、後から部屋に入ってきた奴らもいるから、正確な人数はオレにはさっぱりで……だけど、オレの体を方々から押さえつけることができるだけの人数がここに集まっているのはわかった。
手渡されたジュース。
アレに何かが入れられていたんだってわかっていても、もうどうしようもない。
「あ゛あ゛っ……」
ジュースが伝った食道が焼けるように熱くって、追いかけるように手足の指先から痺れるようなチクチクとした感覚が広がって、うまく体が動かなくなった。
頭はぐらぐらしてて、そして股間が痛いくらいに張り詰めて……後ろの方は、触らなくてもわかるくらいびちゃびちゃに濡れてしまっていた。
「おい!下着ごと引きずり下ろせ!一回突っ込んじまえば大人しくなるだろ」
先輩の言葉に、わぁわぁと何事かを叫びながら手が四方八方から伸びてきて……
オレのズボンを引き摺り下ろすのはあっと言う間だった。
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