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落ち穂拾い的な 実は

「当分の間、髪とか弄らない方が良いよ」  退院時の診察の際にそう言われ、オレは少し鬱陶しいなって思い始めた髪を引っ張った。  相変わらず目に痛いと思える金色だ。 「あ……じゃあ縛っときます」 「切るのはいいよ。肌が敏感になっている時期だから、薬品にかぶれやすくなるし、万が一子供の皮膚についたら大変だからってことだから」 「へぇ」  そんなこと全然考えなかったからか、帰ったら速攻で色を足そうと思っていたところだ。 「じゃあ、当分帽子でも被るかぁ」 「大袈裟だね、長い期間じゃないから」 「オレ、地毛が白いんで目立つから」  ぐいぐいと引っ張った毛先を見ながらそう言うと、パソコンを見ていた瀬能の目がさっとオレを見る。  胡散臭い目をはっとさせてオレの頭の先から爪先まで見て……  じろじろと見られる居心地の悪さに、それを遮るように慌てて手を振る。   「や、病気とかじゃないんで!なんか、父親が外人だったらしくてっそのせいで  髪が白っぽくて……」 「ちょっとごめんね」  そう言うと瀬能はオレの前髪にちょっと触れて、入院中に伸びだ部分を確認しているようだった。  オレの髪は……母親に言わせると外人の父親似で、プラチナブロンドに近い。  顔立ちは母親似で、髪色だけ父親に似たオレは自分で言うのもなんだけどちぐはぐな外見だ。  だから金髪にしてる。  それならまだ、イキってるってことで通せるから……  小さい頃はずいぶんと奇妙な視線を投げかけられたものだった。   「黒髪を脱色してるのかと……」 「金髪の方が伸びた時目立たないんだよね」  いろいろ考えてのコレだ。  別に不良とかそう言うわけでも……なくもないけれど、コレはオレなりの処世術でもある。 「…………」 「えっ なんかまずかった? んすか?」 「  あ、いや、そうか。思い込みってのは怖いものだね」  瀬能ははは と軽く笑って何事かをパソコンに打ち込んでは幾度か頷く。 「そうか……色素欠乏症ってわけじゃなくて安心したよ」 「? それだと、なんかまずいんすか?」 「あー……いや」 「子供に遺伝?する病気みたいなのがあったり   」  嫌な予感に慌ててそう尋ねると、瀬能は大慌てでさっきのオレのように手を振った。 「大丈夫!君の子供は健康優良児だよ!」  そう言われて……ほっとできるようになった自分は、わずかでもタマコと向かい合えているのだろうか?  医者の最初の頃の渋い顔からは想像もできないくらいニコニコとした表情を見ていると、少しはそうなんじゃないかなって思うと嬉しかった。 END    

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