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赫砂の失楽園 27
バスルームの床には詰みあがった札束。
それを目の端に映しながら喘ぎをこらえるために唇をぎゅっと噛み締める。
「っ ぅっ」
大きな手は指も太くて、幾ら綺麗に手入れがされているとは言え男の指を三本も入れられれば、オレのアナはもういっぱいいっぱいだ。
仕方なく手を置いた男の肩に爪を立てそうになって、慌てて手を握り込む。
「も……もう、じゅうぶん ……っ」
「じゅうぶん?この程度で?」
「っ……ふ、ふつ……う、は……」
切れ切れに言葉を紡ぎながら視線を下すと、白いトーブを持ち上げるように主張しているものがある。
水に濡れて重くなった生地を押し上げるほど勢いを増したソレは、布を挟んでいると言うのにどれほどの質量かを見せつけていた。
ごく と思わず喉を鳴らす。
牡だ……と自然と言葉が浮かぶ。
「ぁ……」
「入るんだな?」
「……っ……ぁ、ああ」
「では寝台に移ろうか?」
長い指がずるりと抜けて行く拍子に節が入り口を刺激して体が跳ねた。
「~~~~っ」
ふふ と耳元で笑われて、顔がかっと熱くなる。
決してのぼせただけではないその熱は、じりじりと胸の方まで広がってはさんざんほぐされた箇所の熱と相まって心臓をうるさくしていく。
よたつくように男の手から逃れてバスルームの扉に縋りつくと、追いかけるように男の手が伸びる。
どんなにこちらが距離を取ろうとしても逃がす気はないと言いたげな行動に、男を睨むようにして見上げた。
「さぁ、行こうか」
トーブを脱ぎ捨てた男の体は非の打ちどころのないような鍛えられた肢体で、自分の肌とは違う小麦色に焼けた滑らかな皮膚はつい見とれてしまうような魅力がある。
オレが今までにお相手した人たちとは段違いの綺麗な体だと、視線で体のラインをなぞりながら思う。
純金で作ったような髪と宝石をはめ込んだような赤い瞳、身長も体格もいいこの男は……どうしてここまでオレを追いかけるんだろう?
「……わかった」
頷きながらちらりと視線を動かすと、オプション代だと言われて放り投げられた札束が……
ここまで来てあの札束が偽札だとかは思ったりはしないけれど、逆にそこまで金を積み上げる理由がわからなくて頭の中は混乱しっぱなしだ。
Ωのように特別に目を引くような容姿でもない。
βの立ちんぼなんて珍しいものでもない。
オレは……自分で言うのもなんだけれど、素性を調べ上げてその上にこんなホテルに部屋を取ってまで抱こうと思える価値の人間ではない。
「…………」
理由もわからないまま執着されて、買われた なんて……恐ろしすぎる。
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