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赫砂の失楽園 30
「なな、何言ってるんだ!」
あのケース一つに一体いくら詰め込まれているのかわからないけれど、それが二つ……そして追加で持ってこられた分が新たに一つ。
小金ならばぱっと見て判断もできるだろうが、一生見ることはないと思えるほどの大量の札束を前に、飛び上がるようにして怒鳴りつけた。
「まだあと七つ用意してある。急がせたからこれだけだが、私はもっと用意することができる」
胸を張るように言われても、オレの感想はだからどうした……ぐらいでしかない。
お金持ちすごーいと科を作って可愛く振舞えばよかったのか、それともすべてを奪うつもりで男に組みかかればいいのか……
金をちらつかせられても、職業は石油王かな 程度にしか思わない。
あまりにも非現実的すぎるせいか、それらがおもちゃのお札だと言われた方がよっぽど現実的だ。
「いや、そう言うのはいいです……と言うか、それよりも……どれにします?オプション」
大きなベッドの端に置かれたままのジェラルミンケースを眺めながら挑発するように尋ねかけた。
あれだけほぐされたというのに、男のナニが入り込もうとした時はその圧迫感に自然と体が逃げを打った。
力ずくて押し入ろうと言う乱暴さはなかったけれど、それ自体の大きさがすでに凶器に近いためにざっと血の気の引く音が聞こえた気がする。
「あ゛……っ」
救いなのは自ら腰を下ろさない限り、これ以上ナカに入ってこないと言うことだ。
「どうした、まだ入るだろう」
「っ……」
少し男の言葉がつっけんどんなのは、挿入の際にひと悶着あったからで。
生でするのが当然だろうと言う男と、そのオプションはない!と言い張るオレとでにらみ合ったからだ。
いくら積まれてもそれだけはしないと突っぱねて、なんとか納得をさせたけれど……
機嫌は損ねてしまったらしい……いや、機嫌を損ねたと言うよりもすねさせてしまったと言う手ごたえに近い。
小さな子供がわがままが通らずに頬を膨らませている、そんな雰囲気なのだ。
「あまり時間をかけると、スキンが持たないぞ?」
「っ! ……は、入るから動くなっ!」
なんとか押し通して男の股間につけたコンドームは、持っている中で一番大きなサイズをつけたはずなのにずいぶんときつそうで……
破れてはいないだろうけれど、大丈夫そうにも見えない。
オレは覚悟を決めてぐっと腰を下ろした。
「 ぁ 、あー…… っ」
びくびくと内太ももが痙攣する。
確認しなくても、男の高ぶりを咥えきった部分が目いっぱい広がっているのを感じる。
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