617 / 714
赫砂の失楽園 31
ひゅ と内臓が押されて肺から息が押し出される。
あまりの質量にチンポじゃなくて焼けた杭か何かを差し込まれて、今から処刑されるんじゃないかって不安が一瞬よぎったほどだった。
「ぁ ぁんっ んんっ 」
それでも悲鳴を上げずに受け入れることができたのは、オレがこれまで培ってきたセックステクと、それに基づくプライドだ。
でも体中びりびりと電気が走り回っているかのように震えているし、ここからテンポよく挿入を繰り返さないといけない なんて到底無理な話だった。
「ぃ、ぅ゛ っんっ」
足に力を入れて、わずかに腰を浮かそうとするも叶わず、どうにもできないまま串刺し刑に処されている気分で胸に縋る。
オレが倒れ込んだくらいじゃびくともしない体。
美しく、筋肉質で、完璧な造形を持つそれは一日眺めていても飽きないほどの存在感だ。
「じれったいのだが?」
「 っ……お、客さんのが大きすぎて 」
歯がガチガチ鳴りそうなのをこらえながら媚びを売るようにして言うと、男が小さく噴き出すように笑う。
そうすると先ほどまでの剣呑とした空気が薄れて、オレ自身も少し肩の力を抜くことができた。
「それに 」
軽く目を眇める。
ゴム問題と一緒にフェロモンの話もきちんとしておいたのだった。
そのフェロモンは使うな と。
男はそれを守ってオレの方に向けてフェロモンを放ってはいなかったけれど、まるで触手のように体に隠れてこちらの様子を窺っているように見える。
隙あらば……と言ったところだろうか?
「フェロモンをお使いになってもオレには効きませんから」
「そんなはずはない!」
むっと言い返した男は今にも頬を膨らませるんじゃないかって様子だった。
「まったくないわけではないですけど、それでオレが乱れることなんてないですよ?使うだけ無駄です。それよりもそっちに気を向けるくらいなら、オレだけを見ててくださいよ」
「ハジメだけを見ている」
「そう、他に気を散らさないでくださいよ」
だからそれを引っ込めろ と暗に言ったつもりだったけれど、男には通用しなかったようだ。
「私は最初から、ハジメ以外見ていない」
「え、えと 」
「今後も、ハジメ以外を見る気はない」
それは……オレの太客になりたいとかそう言ったことだろうか?
不審人物すぎるし、犯罪に巻き込まれたりしないかと言う恐ろしさもあったけれど、それでも定期的に金を落とすと(しかも大金)言ってもらえるのはありがたい。
「nur vi」
「へ?」
「君だけだ」
肉厚な唇が迫って、まるで食らいつくようにオレの唇を覆いつくす。
ともだちにシェアしよう!