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赫砂の失楽園 34
ナカが切ない。
「んっ ァっ、ぁんっ、ん゛っ」
「離してくれないのはハジメだろう?」
オレが引き留めるのに便乗するように、男は入り口をこねくるように小刻みにカリで苛めてくる。
ナカに仕込んでいたローションの音がぶちゅぶちゅと乱暴に響いて、耳を塞ぎたくなるほど卑猥だ。
「 ゃっ、ちが ナカ は、こま、困るっ だ、出さな ────ひぃ゛っ⁉」
どちゅ と突然最奥を責められて肺の空気が一気に押し出された。
男の熱が触れた部分がじんじんとして、今までの客が届きもしなかったような箇所をごりごりと先端が触れてくる。
「ぁ゛ ──── っ! ぃ、────‼」
なんて叫んだか自分の耳には届いてなかった。
けれど至近距離で見つめてくる赤い瞳は嬉しそうに弧を描いて、肉厚な形のいい唇はわずかに「孕め」と言葉を漏らしている。
ごちゅ と内臓が抉られ苦しいはずなのに空気のない肺で嬌声を上げ、突き飛ばさなきゃいけない腕で男の背中にしがみつく。
最初の頃の余裕たっぷりだった態度からは想像もできないほど激しく腰を振られ、抵抗も何もあったものじゃなかった。
「いや」と言ったのは何度目だったか?
それとも「やめろ」だったか……
「 ゥ んっんんっ あ、ンっ おくっおくぅ!」
「わかっている、ハジメは奥が気に入ったんだな?」
「ふ、ぅ、んっ!ぅん! おく 」
確かに拒否の言葉を吐いていたはずなのに。
「ハジメ、 愛おしいハジメ、許しを くれ」
「ァ、ん? らに なに ゃだ、やめ おく、やめない で っ」
ゆるゆるとした動きになった男に縋りつき、オレはもっと気持ちよくしてくれと希う。
「君のナカを汚していい、許しを っ」
眉間に深く皺を刻みながら、オレの胸に額をつけて願うさまは神様に祈る姿にも似ていると思った。
だからオレは男に絡めた足に力を込めながら「いいよ」と言葉を返す。
男がこれ以上ないと言うふうに極上の笑顔を見せて抱きしめてくるから、その拍子に前に出されていた精液がこぽりとあふれ出した。
ずるりとナカから男のチンポが抜けて、空虚感に苛まれてとっさに手を伸ばした。
けれどくたくたのオレには抱きしめるなんてことはできなくて、ただ指先が金髪の先端をかすっただけで……
「ぅ 」
それが物悲しくて鼻の奥にツンと何かを感じてしまった。
「ハジメ、まだ欲しい?」
問いかけられても、下半身の感覚はもうないからわからない。
ドロドロに溶けて何も残ってないんだって言われても信じてしまいそうだ。
「まだ、君のナカにいていいと言ってくれるなら、私はこの世でもっとも幸せな男だろうね」
そう言うと長い腕でオレを包み込んでぎゅっと抱きしめてくる。
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