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赫砂の失楽園 39

 流弐が何を言っているのかわからなくてぽかんと口を開く。  生活のためとは言え、オレがしていることは褒められたことではないのは自分自身が一番よくわかっている。    もちろん……はっきりとばれてしまえば、弟たちからどんな目で見られるか、覚悟がなかったわけではないのだけれど…… 「それは……オレは、だって、お兄ちゃんだし」  もともといるかいないかのような親は生活を支える頭数になんか入れていない。  そんな雲のような相手に縋って泣きわめくよりももっと現実は残酷で過酷で、待ってくれることなんか何一つなかった。  小さな弟と妹を抱えて必死にやってきただけで……犠牲とかそう言った考えは一切浮かばない。  ただ兄弟たちとどう生き抜こうかと言うことだけが目標で…… 「綺麗ごと言う気はないけど、オレはオレのやれることを必死にやってきただけだから」 「俺っもっと働くようにするから!……てか、学校辞めて働いたら参希たちにもっと……」  ぴしっと額を弾いてやると流弐の言葉が途中で止まる。 「それを言うなら一番に辞めるのはオレだろ」  正直、大学に進学してしまったことに対して失敗したな と思ってなくもなかった。  良伍が生まれる前、何がどうしていたのかほんの少しの期間だけ両親がまともだったことがあって、進路を考える時期に珍しく両親が家にいたことがあって、つい相談してしまったのだ。  そうしたら、学業の大切さやなんとしてでも大学には行かせてやる なんてことを熱く語って……どうしてだかその言葉に思わず感動した結果、学費の半分を奨学金で賄うと言うところに落ち着いて……  でも両親は結局、直後にまた行方をくらましてから良伍を連れて帰ってきた。  どうしてオレはあの時、親の口車に乗ってしまったのかと悔やむこともあったけれど…… 「だから、オレが稼ぐからお前らは心配するな、な?」 「……」  何かを言いたそうに流弐はぐっと顔をしかめた。 「でも  」 「悪いのは親だから」  お母さん、お父さん、なんて言葉を使う気すら起きなくて、オレはそう言って話を切り上げようとした。   「お、俺も兄さんとおなじこと   っ」  思わず腕を振り上げたせいで流弐の言葉が途切れる。    続きの言葉はオレが絶対に聞きたくなかった言葉で…… 「そんなこと考えるな!」 「  っ」  バシ と鈍い音を立てた流弐の頬は赤く染まっていて、オレがしでかしてしまったことを見せつけてくる。    幾ら生意気になったとしても、幾ら喧嘩をしたとしても、一方的に手を上げるなんて最悪で……  

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