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赫砂の失楽園 61

 けれど指先が震えて、うまく操作できないまま支離滅裂な言葉だ画面に表示されていく。  オレを取り囲むように集まってきた三人の間を縫うように、外からは大きな指示を飛ばしているらしき声が聞こえる。    きっと、それはオレを探している人々の声だろう。  オレとのことをなかったことにするために、あいつがオレを探させているんだ。  きらびやかだが静謐に満ちたこの場所には似つかわしくない喧騒に、三人の視線が絡まってそしてオレに向かってほどけた。  何かを理解しているかのようにも見えるし、ただオレを慰めたいだけの表情にも見える。   「  オレ   は、っ……」 「『あなたの願いは?』」  読み上げられた言葉は機械音声のそっけないものだったけれど、覗き込んでくる三人はにこにことしていて言葉だけでは伝わらない感情も伝えてくれた。  オレの願いは決まってる。  弟たちに会いたい。  弟たちのいる場所に帰りたい。  こんな……柱一本でオレの家族が一年食いつなげるくらいの金をかけた場所なんかじゃなくて……そうすれば今まで通りの生活を送れる。  毎日、金のことで頭をいっぱいにして、選ばれないのは仕方のないことだって理解しながら、それでも守るべきもののために踏ん張って立ち続けることのできる、そんな……    アルノリトに出会う以前の、選ばれない生活に戻りたい!    そうすれば……オレはこの出来事を夢だったんだって思えるから。   「Rekoni」  呟かれた言葉は意味は分からなかったけれど、沁み入るような柔らかな心地でオレの耳を打った。      ぱちゃ と水が音を立てる。  噴水があるだけで驚きだと言うのに、三人に連れてこられた先は広い浴場だ。  白で統一されていて清潔ながらも、ここもやはり同じように隅から隅まで贅の限りをつくしたように金銀、それから宝石などで飾り立てられていた。  吹き抜けているせいか風呂と言うよりは温水プールに近い感覚を受けて、そろりと三人を見る。 「わっ わっ……あのっ、服っ……っ」  ベッドにいた時のように三人はなんの躊躇もなくガウンを脱ぎ捨て、一糸まとわない姿になって湯の中に入って行く。 「『あなたも』」 「いやっ オレは  っ」  手を振って、こんなことをしている場合じゃないんだ と翻訳して聞かせる。 「『ここは、誰も入れないから』」 「はい  ? はいれない?」 「『だから、早く』」  くすんだ金髪が焦れたように駆け寄って、オレの服を引きはがす。  抵抗はしてみたものの赤髪が参戦してはオレに勝ち目はなくてあっさりと裸にむかれてしまった。  

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