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赫砂の失楽園 71

 進みながらこの先どうしたものかと頭を悩ませる。  出たところでこの先待っているのは結局王宮の人間に捕まるか、どうしてだかオレに悪意を持っているモナスート教の人間に捕まるかだ。  それならもっとカイ達としっかりとしたやり取りをしておけばよかったと思うも……  八方ふさがりが過ぎてへたり込みたくなるがこのままここにいても、ただここで飢え死にするくらいしか未来がない。  仕方なく立ち上がって壁に縋りながら歩き出す。  暗く長く続く道をどれだけ進んだのか、フェロモンが残っていない道を避けて避けてたどり着いた先に、小さな明かりを見つけた。  小さな……と言うよりは、薄い筋だ。  それが四角くあるところを見ると、そこが出口なのは間違いないのだろうけれど……  少し悩みながらそれでも手を伸ばそうとした時、出口の方からゴソ と低い音が響いた。  一瞬の緊張と、逃げなくてはいけないと言う思いに足がもつれてつんのめる。  頭の中では華麗に身を翻して駆け出しているはずなのに、実際はゴツンと体を側面にぶつけた挙句バランスを失って地面へと倒れ込んでしまった。 「ぃ ────っ」  したたかに体を打ち付けて思わず上げそうになった声を飲み込む。  少しでも這いずって光の届かない奥へと行こうとするも、焦ったオレをしり目に後ろの音はどんどん大きくなってさっと光が差し込んだ。  オレの肩口まで伸びた光にざぁっと血の気が下がる。 「  haltu!」   鋭い声は意味を考える前にオレの動きを縫い留めて……  鼓膜を破るんじゃないかってくらい鼓動がうるさくて、何か言われたのに言葉が聞こえなかった。 「す、すみま  わか    「ハジメ!」  ガタガタと震えながらも、名前を呼ぶ声に心当たりがあった。 「っ⁉」  足首を掴まれて、穴から引きずり出される獲物よろしく一気に部屋の中へと引き込まれると、狭い中にいたことからの解放感からかすっと肺に息が入ってくる。  その中に、感じたくない匂いを感じた。 「アルノリト……」 「! ハジメ! 名前を呼んでくれるんだね  っ⁉」  飛びついてきそうになったアルノリトを突っぱね、よたよたと壁へと後ずさる。  逃げて逃げて、……その先がこいつのところだなんて洒落にもならない! 「心配してたんだ」  そう言って愛おしげにオレを見るが、その本人がオレを処刑しようとしていたことをオレは忘れたわけじゃない。 「  っなに、言ってんだ   」 「何?」  砂漠と同じ赤い瞳はためらいを含んで瞬き、端整な顔が疑問に歪んでいく。 「オレの心配⁉ ふざけるなよ! オレの首を切ろうとした挙句に薬を盛ろうとしたくせに!」 「  ────っ⁉」  はっとしたうろたえ方は……

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