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赫砂の失楽園 100

 ホンザがオレにしたように、誰かが弟達に向けて悪意を放った。  しかもそれは脅しなんてレベルではなく、害が出るレベルで……だ。 「ハジメ?」  ざっと血の気が引いたのが分かった。  流弐が気づかなかったら肆乃はどうなっていた?すぐに異変に気付けばいいが遅効性のものだったとしたら?  まだ小さい肆乃はその影響も大きいはずだ。 「……ブラン!」  アルノリトが叫ぶ前にさっと走り寄ってきたブランは険しい顔をしたまま人を呼んで……  すべての食べ物や飲み物が片付けられたテーブルを見ながら、泣きながら寝てしまった肆乃を見やる。  自分が悪いわけでもないのに繰り返しごめんなさいと言いながら泣きじゃくる肆乃を宥めて、怒鳴り声をあげる流弐をなんとか押し留めて……  震えて固まる姿は、冬の寒い日に皆でまとまって眠った出来事を思い出させた。  あの時とは違って弟達には一切笑顔がなくて……  寒いと言い合いながらもぎゅうぎゅうと抱き締め合ってると、そんな何でもないことが楽しくて笑い合っていた。  疲れてぐったりしているせいか流弐を唇を引き結んだまま何も言わない。   「   ハジメ、今、食事を用意させている」 「いらない」 「ハジメ」 「あんなことされて食べれると思うのか?」 「せめて水分だけでも摂らないと……」  オレを労わろうとした手を弾く。  睨みつけたと言うのにアルノリトは唇を引き結んだまま表情を変えず…… 「アルノリト……オレ達を今すぐ日本に帰してくれ」 「いやだっ!」 「……いやだ、とか、そう言う話じゃないんだ」 「あんなに愛し合っただろう?君は私を受け入れてくれて、本当に心から繋がれたじゃないか⁉あんなに情熱的に……「あれは!」  言葉を打ち切らせるために声を上げると、続く言葉がわかったのかアルノリトの顔がくしゃりと歪む。 「 ──── 最後の思い出だよ」  小さな笑いを含んだ声音で言うと、アルノリトはぶるぶると否定するように首を振った。 「元々、オレの考えって言うのは変わらなくて……この国に来る気も番になる気もないんだ。まぁ……ベータだから番とかそんな話じゃないんだけど」 「そん  っ」 「申し訳ないけど、アルノリトがオレの一番になることってのはないんだ」  ひゅ と息の吐かれる音に反射的に申し訳ない気分になる。  けれど、これは事実だし翻りようもない話だ。  オレには弟達が一番だし、最優先事項だ。  あんな親の元に生まれて、それでも歯を食いしばって生きて来れたのは弟達がいたからなんだから……  だから、これは覆らない。  

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