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赫砂の失楽園 101
「だから、オレは日本に帰るよ」
「そん き、君のお腹にはっ 「いるわけないだろ!」
怒鳴りつけると気圧されたアルノリトが言葉を失って黙り込んだ。
「現実を見ろ。オレはベータで番にはなれないし、ましてや運命ですらない。子供ができることもない。国民から否定されて、命まで狙われた状態で、オレがここに残ると言うと思うか?お前の思い込みに付き合って弟達まで危険に晒して」
「 っ、きみ……達は……私がまも「守れてないだろ!」
目の前の菓子に毒が盛られていたことに気づいたのは流弐だ。
アルノリトじゃない。
「あんたは、オレ達を守れなかったんだ」
「 っ」
オレの言葉はアルノリトをひどく傷つけたのは間違いないようだった。
けれど、それが正解だ。
「オレは自分を守ってくれない人間の傍にいる気はない」
「まっ……ハジメっ、そんなことはない!私はっ全身全霊で君を守るからっ」
「守れてない」
「 っ」
「だから、オレ達が飢える前に日本に帰してくれ」
一切の縋りつく隙も与えず、オレはアルノリトに繰り返した。
オレ達に菓子の検査結果を告げに来たのはブランではなかった。
見かけたことのない顔に一瞬不安を感じると、金髪碧眼の男はにこやかに笑いながら「私が代理となりました」と説明をする。
アルノリトの傍を離れなかったブランがいなくなった理由を、オレは簡単に見つけることができた。
わずかに口角の上がるような表情をしているくせにまるで能面を見ているようだ……とアルノリトを見上げて思う。
今回のこれもホンザが関わっていたんだろう……その関係でブランがここにいられなくなったのかもしれない。
笑みを向けているのに凍りついたようなそれは、ブランが不在になったことにショックを受けているのがはっきりとわかって……その痛々しさに慰めてやりたくなった。
けれど、それをするわけにはいかない。
「……ハジメ、少し話を」
人のいないところに行きたい と視線で訴えてくるのを、首を振って断った。
弟達の傍を離れたくないと言うのが一番の理由だったけれど、打ちひしがれたようなその姿を至近で見続ける自信が持てなかったから。
「……一時間後に国を出られるように手配した」
「そう、ありがとう」
できるだけ固い声音で返すと、オレを見下ろす赤い瞳が潤んで曇る。
「 この国は、本来は運命の番から生まれた最初のアルファが後を継いでいくんだ」
今更ながらにこの国の伝統を出されて思わず眉が寄った。
「王太子は時期が来れば世界中を旅して運命の番を求めて見つける。だが伯父上は運命を見つけることができなかった、嫡男だと言うのにだ」
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