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落ち穂拾い的な 流弐のお友達
シャラシャラと音を立てるアクセをつけた人間に左右と前を塞がれて、俺はどうにもできずに身を縮める。
赤くて薄い服……と言うか布は、いろんなところが露出している割には肝心のところはちっとも見えないようになっていて、ひらひらひらひらと俺の男心を弄ぶ。
「リュー、どこ いく?」
服の色に負けないくらい真っ赤な髪の人に言われて、でも俺は答えを持っていなくてただただ首を振るしかない。
病院から出て、連絡を入れていたけれどこんな速さであいつがくるなんて思わなかった。
最悪、もったいぶって返事がこないまま無視されるんじゃないかって……
「家、いきたい」
にこにこと紫の目を細めながらねだるように言われると、そんなふうに見てないのにどうしてか顔が赤くなっていく。
「家……家、は 」
こんな薄いひらひらした服で、うちの部屋に入ったら畳や柱で破けてしまいそうで……大慌てで首を振ると綺麗な顔を悲しそうに歪めるから、罪悪感が半端なかった。
「二人を追いかけるのは?」
「恋人のじゃまするの 」
「やぼ?」
「そう!やぼ!」
わっと三人で俺を中心にやぼやぼと言い出すと、なんだか怪しげな儀式をしているかのようだ。
「あー……君達、他の患者の邪魔になるから」
「わっすみません!すぐに退きます」
胡散臭い笑顔で俺達に手を振る瀬能先生に慌てて頭を下げて……俺はブランに紹介された病院を後にした。
兄貴がいつもなら帰ってくる時間に帰っていないことに慌て始めた時、その男が俺達を招待したいとアパートに訪れた。
いたずらにしては手が込みすぎているし、着ている服も安物じゃないって俺でもわかるもので……何よりもその纏う独特の色のフェロモンが、先日兄貴が拾ってきた男と同じだったから何かあったんだってすぐにわかった。
乾いた空気と日本にはない甘い花を絡めたような華やかなフェロモンは、平身低頭の言葉を漏らしながらもやっぱりあの男と同じでただものじゃないって物語っていて……真摯に俺を説得するあの灰色と青色の不思議な目に見つめられて、ちょっと信用してもいいかなって思ってしまう相手だった。
そんなブランから、国へ向かう機内で何かあれば と連絡先を貰っていた。
結局、その何かあれば……は、ブランの弟の手で引き起こされたんだけれども。
それでも日本に帰ってきて、兄貴の腹からαのフェロモンが見えた時になんとか向こうの国の人間と連絡を取らないと と思って縋ったのがブランで……
現実を見つめ直してみると、俺達に毒を盛ろうとした人間の身内に何してるんだって思うんだけど、王子様への連絡の取り方なんてわからないしってことでずいぶんとテンパっていたらしい。
そのブランが話を通してくれたって言う瀬能先生を、信用していいのかどうなのかで結構ぎりぎりまで悩んだりもしたんだけども。
「そ、そう言えば、ブラン は?」
アパートのくっそ狭い部屋に俺と三人で向かい合って座ると、いい匂いに目が回りそうで、思い出した時にって思って名前を出してみた。
幾ら王様の側近?って言っても、弟があんなことをしたんだからただじゃすまなかったはず……そんな中なのに、頼った俺の連絡に快く応えてくれて王子様にまで話を通してくれていたんだから……
礼くらい、言うべき? だろ。
「ブラン」
ぽつん と言葉を漏らしたきり、あれほどはしゃいでいた三人は口を噤んでしまう。
ヒヤリとするのは、日本と法律?が違うからだ。
「……ブランは……きんこちゅう?」
「謹慎中」
「きんしん!」
「ブランは、えっと……えーっと、生きてる?」
処刑とか、そんな話になってやしないかと遠回しに聞こうとしたが、この三人に通じないかもと思ってストレートに口に出す。
「もちろん!」
はっきりとそう返されて……そうか、と胸を撫で下ろす。
ひとまず生きてはいると言うのだから、兄貴経由でお礼が言いたいと言えばそのうち会えるだろう。
あの印象的な赤いフェロモンを、もう一度見てみたいと思った。
END.
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