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第15話 秋良の兄、祥一朗
俺はフラつく身体を祥一朗先輩に支えてもらいながら、エレベーターで上昇していた。このマンションは祥一朗先輩が持ってる部屋で、いわゆる分譲マンションらしい高級感があった。確か先輩は高校生の頃から鱗川家の会社の経営の手伝いをしているんだ。呑気な秋良とはえらい違いだ。
俺がクスリと笑うと、先輩は俺を抱えて歩きながら言った。
「何だ?」
俺は、寄りかかる身体付きや声は兄弟だけあって凄い似てるんだなぁとぼんやり思いながら、先輩を見上げた。
「…先輩と秋良って、凄い似てて、凄い似てない。ふふふ。」
先輩は少しため息をつくと、ボソッと言った。
「私のことは先輩じゃなくて、祥一朗でいい。」
俺が答える前に、俺達はドアの前に到着した。先輩が手をかざすとドアが開く小さな機械音がした。鍵まで最新式か…。
明るめの間接照明が、マンション内をリラックス出来る空間にしている。スタイリッシュなモノトーンかと思われた内装は、思いの外温かみのある明るいポップなものだった。北欧風とでもいうか…。
俺は大きなソファにドサリと沈み込むと、目の前に次々と運ばれる消化の良さそうな食事に、目を見張った。
「夕食はまだだろう?私もこれからしばらく食べられないから、食い溜めだ。雪弥も食べられたら食べた方がいい。」
先輩はそう言ってパクパクと、つまみやすいデパ地下で売っているような惣菜を食べ始めた。俺は先輩の食べっぷりに呆然としながら、ふと気がついた。
「…先輩も俺の性癖分かってたんですか?だから去年、俺が発情期迎える時は連絡しろって言ったんですね…。」
俺は去年、祥一朗先輩が生徒会長だった時に、自分の部屋に先輩を招き入れた時の事を思い出した。
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「先輩、三年生がどうして俺に絡んでくるのか分からないんですけど、俺ほんとに困ってて。秋良達は腕づくでも俺に絡むのをやめさせるつもりなんですけど、そうしたらどう考えても怪我人が出るでしょ。俺、そんなの全然望んでないっていうか…。
生徒会長権限でどうにかなりませんか?」
今とほとんど変わらない、既に他の生徒より大人っぽい祥一朗先輩は、少し考え込んだあとに俺を真っ直ぐに見つめた。
「…黒崎雪弥、お前が希少種の黒豹の家系なのは知ってるやつは知っている。お前の友人の白獅子の様に公になっているやつも居るから、希少種自体はそんなに珍しいことではない。…三年がお前に絡むのは、希少種であると同時に、発情期が来てないからだ。高校生で発情期が来てない人間はそれこそ数パーセントだろう。
希少種と未発情期の合わせ技で、お前の価値は天井知らずだ。」
俺は予想外の話に眉を顰めて先輩を見つめた。
「…発情期が来てないってそんなに言うほどのものですか?だって、数年前は誰だって発情期来てない奴らばかりでしょ。」
俺の質問に先輩はニヤリと笑うと言った。
「お前に絡んでる奴らの中で、本当にその価値を知ってる人間は居ないだろうな。あいつらは野性の本能で感じてるだけだ。この獲物を逃してはいけないって。必ず自分のものにしなくてはならないって感じるから、お前に絡んでいるんだ。」
「…先輩はその理由を知ってるってことですよね?」
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