20 / 49

第20話 これから本番※

先輩の優しい言葉にカモフラージュされて、俺はうっかり聞き逃すところだった。『今のは序盤、これから本番』いま、先輩はそう言った?ぼんやりとしがちな俺の意識は、ぎりぎりの所で持ち堪えていた。 「…先輩。発情期って、…これから?」 俺の不安げな顔を見て、先輩は優しく微笑むと驚くべき事を言った。 「ああ。俺も初めての発情期は記憶が曖昧だ。雪弥も発情期を怖がってるが、覚えてないだろうから安心したらいい。」 いやいや、全然安心できないんだけど。ていうか、それだけ痴態を曝け出すって事なんじゃないのか?俺は指先が震え出したのを感じた。 「先輩、俺、…怖い。自分が訳わからなくなるなんて、怖い。」 先輩は俺の様子が急に変わったのに気づいて俺をそっと抱きしめて言った。 「訳分からなくなるんじゃない。…雪弥は、まだ私を発情期解消の道具だと思っているか?」 俺は首を振った。先輩には随分色々と助けてもらった。先輩が俺を落ち着かせようと心を砕いてくれるこの感じは好きだ。 「私は雪弥の事を好ましく思っている。どうでも良い相手だったら、ここに雪弥は連れて来ていない。たとえ相手が発情していたとしてもだ。単なる性の捌け口ではなくて、私達は望んでここにいるんだ。そうだろう?そこに怖い事はない筈だ。」 俺は先輩の優しくて、甘い声に癒されて、恐怖心は薄れていった。それと同時に身体の疼きは一層強くなって、心臓はドキドキと高鳴った。俺は先輩への返事の代わりに、先輩の手を取って自分の心臓に押し当てると言った。 「…安心したら、先輩に触って欲しくなったみたい…。」 先輩は俺をギラつく眼差しで見据えると、俺を抱きかかえて言った。 「雪弥にそんな可愛い事言われたら、もう手加減出来ない…。」 そう言って俺の唇を覆った。甘く吸い上げたと思ったら、あっという間に俺たちは舌を絡めて、貪り合って、ベッドの住人となった。さっき慣らしたせいなのか、それとも発情期のせいなのか、俺の窄みはあっという間に先輩の指を何本も呑み込んだ。 先輩の指先が押し当てて揺さぶる俺の中は、鋭い快感を連れてきた。俺は馬鹿みたいに喘いで、最後までたどり着けないもどかしさと気持ち良さに揺れ動いて、辛くて堪らなかった。 「先輩、もう逝かせてっ。」 俺の懇願に先輩は指を乱暴に引き抜いた。そして、俺をうつ伏せて腰を掴むと、さっきから俺の身体に触れては存在感を増していた剛直を俺のひくついた窄みに押し当てた。

ともだちにシェアしよう!