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第34話 秋良side兄貴からの電話

それは一本の電話だった。カフェテーブルの上で震える俺のスマホにみんなの顔が釘付けになるくらい、俺たちはピリついていた。 俺たちは雪弥が居なくなって4日目、今夜会えなければ5日目の今、何も出来ない不甲斐なさに焦れついていた。どこかで雪弥が顔も知らない誰かと発情期を過ごしてると思うと、悔しさと情けなさが湧き上がってくる。しかも無事かどうかも分からないんだ。監禁とかされてたらどうするんだ。それは俺ばかりじゃなくて、顔色の悪いこいつらも多分同じで、充分に眠れてないんだろう。 液晶には祥一朗とあったので、俺は二人に口パクでアニキと言いながら通話ボタンにタッチした。 『今から来れるか?…出来れば椿と聖も一緒に。今彼らと一緒じゃないのか?…雪弥は心配ない。…ここに居る。元気だ。じゃあ、急いで来いよ。』 兄貴は言いたいことだけを言って切ってしまった。俺との会話を断片的に聞いていた二人は、顔を見合わせた。椿が苦いものでも食べた様な顔で言った。 「…どうゆうこと?ゆきちゃんが祥一朗先輩のとこにいるの…?」 聖は呆然とした顔で呟いた。 「まさか。まさか、知人て生徒会長⁉︎ 確かに、去年助けてもらったけどさ!ええっ⁉︎まさかだろ⁉︎」 聖、まさかって言い過ぎ、と馬鹿なことばかり気づく俺は相当やばい顔をしていたらしい。椿が心配そうな顔で俺に言った。 「…秋良。気持ちはわかるけど。それで何だって?」 俺は椿の柔らかな口調に、少し気を取り直して言った。 「…ああ。俺たち全員で直ぐに兄貴のマンションに来いって。それしか言わなかった。あ、…雪弥は元気だってさ。…行くしかないだろな。…雪がそこに居るなら。」 俺たちはしばらく誰も何も言わなかった。心の中で色々な思いが渦巻いているのはお互い承知の上で、あえて口に出すのが憚られたのだ。口火を切ったのは椿だった。 「…それにしてもさ、ゆきちゃんが祥一朗先輩と今も繋がってたなんて思わないじゃん?多分ゆきちゃんから今回頼んだだろうし。あーぁ、なんかしてやられた感が凄いんだけど。…ゆきちゃんに会ったら俺、何するか分かんないや。滅多滅多のギッタギッタにチューしちゃうかも。」 軽い口調で馬鹿みたいな事を言ってたけど、椿の目がマジだったからこいつ本当にするかもしれないなと、俺はため息をついて立ち上がった。 「まぁ、ここでボヤいててもどうしようもないだろ?…行こうぜ。」

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