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第35話 鱗川 楓の到着

祥一朗と二言三言話してから俺の方を真っ直ぐ見つめる、祥一朗の従兄弟さんと目を合わせた。祥一朗とそんなに変わらない身長で柔らかな笑みを浮かべたその人は俺を見つめると、微かに目を大きくして息をついて言った。 「…なるほどね。祥一朗がこんなに必死になるのも理解出来るな。初めまして。今回発情期のフォロー担当してました、祥一朗の従兄弟の鱗川 楓です。祥一朗の兄貴分で、小さい頃からお世話してます。」 俺は楓さんが俺の発情期中、家に篭っている間の食事やらを用意してくれた事に気付くと、慌てて頭を下げてお礼を言った。 「こちらこそ初めまして。俺、黒崎雪弥です。…食事とかありがとうございました。祥一朗の従兄弟なんですか?てことは、秋良とも従兄弟ですよね? 俺、秋良の同級生なんです。1、2年とクラスも一緒で。ていうか、中学時代から友達です。祥一朗とは、去年俺が上級生に絡まれてたのを生徒会長として助けてくれて、それから連絡とってたんです。…今回、祥一朗に助けてもらっちゃって、その上、楓さんにまでご面倒おかけしてしまって。ありがとうございました。」 祥一朗は俺の側に来ると、楓さんとの間に立って言った。 「雪弥はそんな恐縮しなくて良いんだ。私が好きでやった事だから。…楓、もうすぐ秋良たちも来るから、話はその時に一緒にしてくれ。」 俺はハッとして祥一朗を見上げた。 「え?もしかして、秋良来るの?椿と聖も?」 俺は無意識に祥一朗の腕を掴んでいたらしい。祥一朗は僕の握った手を撫でると言った。 「驚かせてすまない。雪弥はこんな状況で、秋良たちに会うのは気まずいかもしれないとは思ったんだが、いずれは顔を合わせるだろう?それに状況が変わった。雪弥のために、秋良たちにも色々協力してもらわなければならないと思うんだ。詳しくはあいつらが来てから話すけど、その髪色の事と、雪弥の父親に関係する話だ。」 俺は祥一朗に縋り付く様な気分で、腕から手を離せなかった。急に胸がドキドキとしてきた。メモ一枚で、あいつらになんの説明も無しに黙って出てきてしまった事が、どうしようもない罪悪感で俺を押し潰そうとしていた。あいつらは俺のこと、いつも心配してくれていたのに。 気づけば俺は祥一朗に抱きしめられていて、祥一朗の規則正しい心音にざわついていた心も静まって来ていた。俺はハッとして祥一朗を見上げると、何だか嬉しそうな顔をした祥一朗が甘く囁いた。 「…こうやって私に懐いた雪弥を見るのはご褒美だな。」 「…ゴホン。あのさ、俺のこと二人して忘れてない⁉︎」

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