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第38話 三人の到着
マンションのインターホンが鳴って、俺はビクっと身体を揺らした。どんな顔で秋良たちに顔を合わせて良いかわからなかった。玄関に迎えに行く楓さんと祥一朗の背中を見送って、俺はゆっくりとリビングの扉から一番遠い出窓下の机の前に立った。無意識にやったことだけど、俺は自分の卑怯さに気づいて呆れた。本当はアイツらにちゃんと話して向き合わないといけないのに。
もし、発情期の鎖の事を知っていたら、秋良に相手を頼んだろうか?椿に?聖に…。そして一生俺に繋ぎ止めるのか?ハハ、馬鹿なことだ。俺はうっかり祥一朗のことを鎖で繋いでしまったけれど、俺さえ望めばそれを解消する事が出来ると本能的に分かっていた。今は全然そんな気にならないけど。何でだ。
俺は窓の外を眺めながらの一人ツッコミに忙しくて、部屋が静まりかえっているのにようやく気づいた。背中に聞こえる俺を呼ぶ声に、俺はイヤイヤ振り返った。
「…ゆきちゃん。酷いよ、俺たちにメモ一枚で居なくなるとか。心配したでしょ?」
椿の哀しげな顔を見て、俺はたちまち反省した。
「ごめん。俺やっぱり、お前たちに自分を見失った姿なんて見せられないって思って。本当にそれだけ。」
秋良がいつもと違う硬い声で尋ねた。
「なぁ、じゃあ兄貴だったら平気だったって事か?雪、兄貴のこと好きだったのか?ずっと連絡とってたの、俺全然知らなかった。…ほんと、蚊帳の外だったよな。」
途中から俺を責める口調になった秋良の拳がグッと握り締められてて、俺はもう、一発秋良に殴られて終わりにしようかと思った。でも、秋良に殴られたら俺、死ぬかも…。俺はため息を吐いて言った。
「祥一朗はたまたま秋良の兄貴だっただけだよ。去年俺が3年に絡まれて、お前たちと一発触発になった時に相談したのが生徒会長だったんだ。生徒会長が解決してくれた時に、俺は自分の発情期の件も頼んでいた。だから好きとかそうゆう事じゃなかった。」
聖は俺の側にゆっくり近づくと、そっと抱きしめて言った。
「俺たちはさ、お前が悩んでるの知ってたから、ちゃんと相談して欲しかったんだよ。相手に選ぶとか、もちろん選ばれたかったけど、お前の意志は尊重したと思う。メモ一枚じゃなくて、言って欲しかった。な、雪。」
俺はごめん、ほんとにごめんと何度も言いながら、ポロポロと涙が出てきて聖の腕の中で泣きじゃくってしまった。あー狡い!と言いながら椿も抱きついてきたので、俺は少し笑った。秋良はそんな俺たちを何とも言えない顔で見つめていた。
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