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第39話 秋良side兄貴と雪弥

ムカつく、ムカつく!本当にキレそうだ。兄貴が雪の発情期の相手⁉︎ 一体どうしてそんな事が起きる?あれか?去年のトラブルを兄貴が解消したからか?…俺はずっと雪のこと守ってたんだ。雪は綺麗で、無頓着で、隙だらけの危ない奴なんだ。 中学の頃から、俺は雪一筋で。まぁ、性欲は別だけど、それだって、雪の発情期に備えてテクニックを鍛えてたんだ。こいつらだって、俺と気持ちは一緒だ。まだ、こいつらに抜け駆けされるなら我慢できる。なのに、兄貴だと?どーしてそうなるんだよ、雪。 俺がイライラしながら、エレベーターが来るのを待っていると、聖が俺の肩を痛いくらい掴んで言った。 「おい、気持ちは分かるが暴れんなよ?雪が怖がる。」 俺は返事をする気にもならなかったが、一応頷いた。隣で椿が頭の後ろに手を組んで言った。 「あー、ほんと。マジで有り得ない。生徒会長かぁ。俺も生徒会長なら雪弥選んでくれたのかなぁ…。」 ほんとコイツは馬鹿で困る。そもそもお前が生徒会長になんかなれっこないだろ。俺は椿を睨んで言った。 「ちょっと黙れよ。ほら乗るぞ。」 俺たちを玄関で出迎えたのは、従兄弟の楓さんだった。楓さんは俺より7歳上で、いつもニヤニヤ悪いことばかり考えてるような男だ。生真面目な兄貴とはなぜか馬が合うようで、仲が良かったっけ。それでも何でここに? 「やぁ、皆んな早かったじゃないか。まぁ俺もさっき来たばかりだけどね。ちょっと雪弥くんがとんでもない事になっちゃってて、それで皆んなにも協力してほしいと思ってね。祥一朗と相談して来てもらったわけ。まぁ入って。入って。」 楓さんの後ろに立っていた祥一朗は、ひとことよく来たなと言うとさっさと先に奥へ行ってしまった。俺たちは思ってたのと様子の違う雰囲気に顔を見合わせてリビングへ入った。 出窓から外を見ながら、思案気な雪がそこには居た。ただ、雪の髪が銀色にキラキラしていたけれど。俺たちは予想外の事にちょっと呆然としてしまった。どうして銀色なんだ? 雪がハッとして振り返った顔を見た時、俺は再び悔しさが湧き上がってきた。雪はいつもよりずっとずっと綺麗で、発情期が終わったせいなのか、ドキドキするほどの艶やかさを醸し出していた。そして漂う雪のあがなえないフェロモン。俺が雪をこうしたかった。雪が蝶になる瞬間を見たかったんだ。

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