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第40話 楓side黒崎雪弥

俺の前に立っていたのは、なんて言うか美人だった。いや違うな、もちろん美しい肩までの銀色の髪と、グレーの瞳の中心が何色か表現できない魅惑的な眼差しを持つこの青年は、見るものを魅了するオーラに溢れていた。 あの何処に行っても引くてあまたな祥一朗が、俺に頭を下げてまで手に入れたがっていた後輩なのはよく理解できた。そして俺の調査のリアルさが浮き上がってきた。 この情報は本物だ。目の前の黒崎雪弥はとんでもない逸材だった。 だが、祥一朗とのやり取りを眺めたり、少し話をしていくと、この青年が確かに世間ズレしてる事がよく分かった。普通知ってる事をほとんど知らないし、本能で分かりそうなものを全く理解できていない。 俺は逸材以前に、この青年が周囲の人間を無意識に翻弄する理由が分かった気がしたんだ。 発情期の鎖が効いてるからしょうがないのだが、祥一朗と目の前でイチャつくのには参った。身内のそんな姿は何だか見てられない。だが、二人の様子が突然変わった。 俺は二人から驚くべき話を聞いて、それはまた核心への布石に過ぎないとわかった。しかし、永続的な鎖って、そんな事が出来たらどうなるんだ? でも俺が調べた中に、それを使った人物が実際浮かび上がってたじゃないか。俺はこいつらに何処まで話すべきなのか迷い始めた。 そんな時に秋良の弟たちがマンションに到着した。 久しぶりに見た秋良は、祥一朗に背格好は良く似てたけれど、醸し出す雰囲気は随分違った。兄弟というより、従兄弟の方がしっくりくる。まぁ母親が違うからそれも当然か。 秋良は明らかに怒っていて、祥一朗と目も合わせなかった。確か、祥一朗が横から掠め取ったと言ってたっけ。…あれ?もしかしてこれから修羅場なの? そう思う間もなく、雪弥は三人から責められていた。まぁ、雪弥のあのオーラやフェロモンからすれば、執着するのもしょうがない気がするけど。 秋良なんか、思いっきり雪弥のこと好きだって言ってるようなものだったし。はぁ、聞いてるこっちが甘酢っぱい…。 ついには雪弥は、ガチムチの友人の腕の中で泣き出しちゃって。 この彼何処かで見たことあるんだけど。ベリーショートの刈り上げでいかにも漢って感じなのに目が優しくて、モテそうな。あ、アマチュア格闘技で負け知らずの古虎 聖か! それでこのロン毛の芸能人のように甘い顔の男は白獅子の御曹司だろ?そして、秋良と祥一朗か。はー、雪弥は、はべらす男達も一級品だな。 俺は第三者目線で楽しんでいたが、後々すっかり巻き込まれていくなんてこの時は思いもしなかったんだ。

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