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第42話 都市伝説

俺たちはポカンとしたに違いない。 『銀の雫、世界を制する』これはいわゆる都市伝説的な話で、何で唐突に楓さんがそんな事を持ち出したのかと思ったんだ。祥一朗も楓さんに訝しげな視線を向けて言った。 「それって都市伝説でしょう?何か雪弥と関係があるんですか?」 俺は話がどこへ向かうのか分からなくて、思わず隣に座っていた祥一朗を見上げた。祥一朗は俺を庇うように肩に腕を回して俺を引き寄せた。祥一朗にこうされると、妙な安心感があるんだ。俺は思わず目の前の祥一朗の手を握った。ふと視線を感じて見回すと、秋良と椿と聖が、呆気に取られた顔で俺たちを見ていた。俺、何かしちゃったかな…。 楓さんは俺たちを見て言った。 「あー、しばらく、この二人は鎖に縛られてるから、これに見慣れた方がいいぞ。不可抗力だからな。特に一人で発情期を抑えると縛りが強くて、こんなんだから。普通の発情期は、まぁ中坊同士、いいとこ高校生相手だったろうから、一人で発情期を抑えるのは無理だ。一人で発情期を抑えるには相当な精力と経験が必要だからな。祥一朗は凄いよ、ほんと。よっぽど雪弥を手に入れたかったに違いない。」 俺は楓さんの話をふむふむと聞いていたけれど、途中から三人の顔が引き攣って来て、なんか怒ってる⁉︎っぽいんだけど。何か燻ってた炎に燃料ぶっ込んだっぽい…。チラッと楓さんの顔見たら、めっちゃ面白がってる!はぁ…。後が怖い気がする…。 俺がそんな事を考えて頭ぐるぐるしていたら、祥一朗が場を切り戻した。 「ゴホン。…秋良たちの文句は後で聞くから。それで、銀の雫の話だけど、これって特別な銀色の液体を入手できたら、世界を思うままにできるとかいう眉唾ものの話でしょ。大体、液体をどうするのかとか分からないし。」 楓さんはニヤリと笑って俺たちを見回した。 「俺が雪弥の髪色が発情期で銀に変わったと聞いた時に、思い出した話があるんだ。マウンテングループ、誰でも知ってるこの企業の裏情報だ。これは企業人でも、ごく一部の人間しか知らない。あと俺のような情報屋とかな。 …そうだな、椿の爺さんなら知ってるかもしれない。トップシークレットだから、これも他言無用で頼む。まぁ雪弥が関係してくるから、お前たちも他所で言う事はないと思うがな。」 俺は話がどんどん大きくなっていくので、心臓がドキドキして来た。雪豹が珍しいとか、それだけのことじゃないのかもしれない。俺たちは楓さんの顔を見つめた。

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