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第43話 銀の雫
楓さんは話し出した。
「マウンテングループの裏情報ってのは、あの企業の成り立ち方にある。あの企業は今の社長一代であそこまで大きくなった会社だ。よく考えたら、それってとんでもない事だ。しかも社長は50代でまだ若い。丁度雪弥の父親ぐらいで。」
皆が俺を一斉に見るので俺は首を振った。
「違うよ!っていうか、俺は自分の父親の顔も分かんないし!マウンテングループなんて母親にも聞いた事無いし!」
楓さんは少し笑って言った。
「そうだ。もちろん雪弥の父親ではない。ただ、あの会社が雪弥の父親のために、父親の特殊な力を持ってして、大きくなったことには間違いないんだ。父親も銀色の髪なんだよ。表にはほとんど出てこないけど。…銀の雫というのは、雪弥の父親の精液の事だ。」
俺はきっと馬鹿みたいに口を開けていたに違いない。想像の斜め上に話が進んでいて、どう考えていいか全く分からなかった。それは他のメンバーも同じだったようで、聖が考えたまま呟いた。
「何だそれ。雪の父親の精液がご利益があるとかそうゆう事なのか?…やばいね、変な宗教みてえ。」
楓さんは聖の独り言にまた少し笑って、祥一朗に話しかけた。
「祥一朗、心当たりはあるか?」
隣に座っている祥一朗は難しい顔で考えていたけれど、俺の手を握り直すと思い切ったように言った。
「…多分、俺も銀の雫を雪弥から受けたんだ。それが鎖だろう?」
楓さんは手を叩いて喜んだ。
「はっ!さすがだな、祥一朗。冴えまくってるじゃないか。まさにそれだ。
普通、発情期の相手を独占的に行うと、鎖の関係が出来るのは皆も知るところだ。だが、それは時間の経過と共に薄れていく。人生に影響を及ぼすほどじゃない。せいぜい淡い恋心的なものだ。
だが、雪豹の鎖は強い。俺はそれが雪豹の力だと思ってるが、雪豹と関係する事で永続的な鎖に縛り付けられるんだ。そしてその結果を雪弥の父親は、会社を大きくするのに意識的にせよ、無意識にせよ使ったんだろう。
社長は別の人間だが、あの会社自体は雪弥の父親のためのものだと思う。実際、俺は雪弥を目の前にしたから思うんだが、雪弥の父親を喜ばせようと鎖の面々が行動したんだと思うよ。だからこそ、雪弥の父親は表には出てこないんだろう。
以上が俺の調べた事からの推測だ。」
俺たちは誰一人口を開く者は居なかった。何を言って良いか分からなかったからだ。
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