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プロローグ**秘めた想い(2)
きっかけは、親父の転勤から持ち出された引越し。引越し先は、ここから車で三時間。この都会から少し離れた場所。引っ越すのがイヤでイヤで、どうしようもなかった。その時に真っ先に思い浮かんだのが、隣に住む雅さんの顔だった。どうしてなのかと自問自答を繰り返し、そうして気がついた恋心。
だけど、さ。
この恋心は言えない。だって、ぼくは雅さんと同性で、しかも雅さんは彼女がいるんだ。――それは偶然だった。1ヶ月前、日曜日の昼下がりの街中。友達とゲームセンターに向かう先で、雅さんが女の人と一緒に歩いている姿を見かけたことがある。ぼくの頭を撫でる時の優しい微笑みを、その女性にも向けていた。
ぼくよりも少し背の高い彼女はショートカットですらりとしたモデルみたいな綺麗な人だった。華奢な細い腕を長い腕に絡ませて歩いていれば、誰だってひと目見れば恋人同士だとわかる。二人並んでいる姿はすごく似合っていた。
だからこの恋は絶望的。諦めようって思うのに、叶わない恋だと思えば思うほど、恋心は日に日に大きく膨らんでいく……。
だったら……。
少し、勇気を出してみようかな。少女趣味だと思ってしまうけれど、少し自分にまじないをかけてみる。
もし、今年、滅多に降らないこの街で、初雪が降ったら……。
初雪の中、雅さんと一緒にいたなら――。
告白しよう。もしかしたら万が一にも――……。
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