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恋心**言えない想い(4)

 部屋に向かう途中で、母さんが雅さんにシチューを渡したか最後のトドメを刺してくる。 渡せるわけがない。  言えるわけがない。  雅さんのお家には彼女さんがいて、きっとご飯を作っているだろうその光景で、シチュー持ってきたから食べてなんて……。  自分以外の人と――彼女さんと笑い合っている雅さんの顔も今は見たくない。 「渡してない。彼女さんがいたからきっと大丈夫だよっ!!」  言ってからすぐにドアを閉めて、待ち構えているベッドに倒れ込んだ。  知っていた。雅さんには彼女さんがいるってこと……。  知っていた。雅さんがモテること……。  知っていた。ぼくは恋愛対象にさえもなれないってこと。  知っていた、ハズだったのに……。  馬鹿だ。  勝手に想って勝手に傷ついて……。 「ほんと、バカ」  柔らかな布団の中で、今まで我慢していた涙と嗚咽が漏れる。  悲しくて悲しくて……苦しくて……。  泣いたら余計に悲しくなって、また涙を流す。  しばらく泣いていると、遠くからインターホンのチャイムが鳴る音が聞こえた。玄関先では母さんの笑い声に、苦しいのは自分だけだと思い知らされて孤独感でいっぱいになる。 「さくら~」  明るい声がぼくを呼ぶ。だけど今は放って置いてほしい。  それなのに、母さんってばぼくの気持ちを少しも汲み取ってくれないんだ。ずっとぼくの名前を叫び続ける。

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